FT短編2

□君を想うが故、
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最近、グレイが変だ。

変と言えば元々修正が効かないくらい変な奴だと思うけれど、最近は増して変だ。そんな変な奴と付き合っている自分も充分におかしいのかもしれないが。

そんな奴――グレイにベッドに縫いとめられて、ナツは目を瞬かせた。

目の前には一般的には端正と言われているグレイの顔がある。両手はグレイの大きな手によってシーツに押し付けられて身動きが取れない。喧嘩を売っているのかと思ったが黒塗りの瞳にはいつものような悪戯っぽい光はなくて、ただ真剣だった。


「グレイ?」


名前を呼んでも返事はない。何か妙な雰囲気が流れているのは肌で感じていた。熱いけれども背筋がぞくっとするような感覚。居心地が悪くて目を逸らすと、ぎりっと握られた手首が軋みを上げた。
恐る恐るグレイの瞳をもう一度見る。そこには形の良い眉を寄せて、辛そうにしているグレイがいた。


「なんなんだよ」

「―――……いや、何でもねえ」


そうすると手首を掴んでいた手はするりとはずれ、グレイはベッドに寝転がった。ようやく解放されたことで今まで掴まれていた所にひやりと空気が染みる。

熱かったのかとその時気付いた。
グレイの掌は熱くて、見つめてくる瞳にもどことなく熱がこもっていた気がする。

ここ最近グレイがおかしい理由はこれだった。

似たような事を何度かされたけれど、いつも何かを求める様な目をされるけれど、それがなんなのかナツには分からない。言ってもくれないから、向けられた背中を見つめ逃げることしかできなかった。締め付けられるような気持ちに目を瞑って耐えることしか――。


「グレイ……」

「……なんだよ」

「あの、さ」


背中越しに呼び掛けるが、体勢を動かさないまま返事のみを返される。それが不機嫌さを表しているようで、居心地の悪さにシーツを握りしめた。しかしここで話をやめるわけにもいかず、ナツは口を開いた。


「お前、何か我慢とかしてんのか?」


一瞬、グレイの背中が動く。


「なんか辛そうだし、」

「――あんま気にすんな。俺が勝手にそうなってるだけだからよ」


そう言って、グレイは小さな溜め息を吐いた。

「言っても分からないだろう」と、そう言われた様な気がして、突き放された様な気分に陥る。俗に言うコイビトというものになる前はそんなことなどなかったのに。それが無性に嫌でたまらなかった。


「おれ、さ……コイビトが何なのか何すんのかよく分かんねーんだ」


コイビトがいる自分なんて想像したこともなかった。何をするのかと意識した事もないし、知ろうとしたこともない。


「ナツ、別に俺は」


そんなこと気にしない。そう言おうとしているのが何となくわかって、漸くこちらを向いたグレイにナツは語気を荒げた。


「お前が気にしなくても、俺が嫌なんだ!」


グレイの言葉を遮るナツの声は悲痛に満ちていた。漆黒を覗きこむ琥珀色は悔しげな色を滲ませている。

恋人同士のあれこれなどナツは知らないし、まして男同士なんて相談する相手も調べる術も分からない。きっとグレイは知っているだろう事がナツには分からなくて、それが嫌でたまらなかった。その所為で相手を苦しめているのかと思うと情けなくて。


「なんかあるんだったら……お前が教えろよ、恋人なんだろ?」


グレイはピタリと硬直し、目を見開いた。


「っ、自分が何言ってるか分かってんのか?」

「分かるも何も、俺だって一応お前の事、その」


その先の言葉が言いにくくて、目を逸らしながらぼそり呟いた。


「何されてもいいって思える位には、その……す、スキだ、し?」


気持ちを直接言葉にすることは限りなくないに等しくて、慣れる事はない。言った途端頬が熱く火照ってきて、どうにも言えない空気が流れる。グレイは穴が開くくらいガン見してくるし、ナツは居心地が悪くてブランケットで顔を隠した。


「〜〜っんな可愛いこと言うとマジで襲っちまうぞ!」

「かわいくねぇっつの!てか、襲うって何だよ!」


聞き捨てならないグレイの言葉にがばっと顔を出すと、はっと息を呑んだ。黒い瞳が、熱をもっているように見えたのだ。ドキリと高鳴る自分の胸を押さえつけ、どうしてそんな反応をしたのか戸惑っていると、急に肩を掴まれた。


「ほんとお前って……ッ無意識で人の事煽りやがって」

「?」


急に馬乗りされて目を瞬かせる。掴まれた肩に体重が掛けられて、何をするのか聞こうとした瞬間口をふさがれた。


「んっ……」


何度も何度も繰り返し口付けられて、うっとりと眼を閉じていると、服の上から身体をなぞるようにグレイの手が動いた。


「……!何すんだよ…ふっ」


抗議するために開いた唇から何かが入ってくる。驚いて引き離そうと肩を押すがグレイは気に留めることなく更に密着してきた。口付けは啄ばむ様なものから、酷く濃厚な――ナツの経験した事のないものへと変わっていった。

徐々に下がっていく手は胸の突起に行きあたり、そこを重点的に触れられてナツはぴりぴりするような妙な感覚に戸惑う。


「ん、はっ…んん…ッ」


奥へと逃げ込ませた舌を熱グレイの舌で強引に絡め取られ、びくっと再び身体が揺れた。つんと主張し始めた胸の飾りが恥ずかしくて、弄る手をどかそうと手を掴むが、途端に舌を吸われてそっちに意識が向いてしまう。


「はぁっ、は……っグレ、」


ようやく唇を解放されて、長らく吸えなかった酸素を存分に吸い込みながらグレイを見上げると熱い視線に射抜かれてドキリと胸が跳ねた。


「グレイ、なに……」

「ずっとこうしたかった、」


ナツの言葉を遮り、グレイは焦れたように上着を脱ぎ捨てた。シャツがベッドわきに音もなく落ちると同時に、グレイは覆いかぶさってくる。


「ぁ、……っ」


ぴちゃっと音を立てながら、胸の突起をざらついた舌でなめられて痺れるような感覚がする。


「グレ、……ひぁッ」


制止しようとしたらいきなり噛みつかれて、痛みとは違う何かが背筋を伝う。出てしまった妙な声に驚いて口を塞ぐと、グレイは顔をあげて意地の悪い顔を作った。


「ば、ばか!何すんだよいきなり……っ」

「恋人同士がすることだよ、お前が教えろッつったんだろ」


さも自業自得だという様な顔をされる。またその顔が癪に触ったが確かにその通りな訳で、言い返す言葉もなく口を結ぶしかなかった。


「分かったから、終わったならさっさとどけよっ」


濡れた突起がグレイの唾液で濡れていて、外気に晒されてまた身体が震えそうになる。何よりそこを見られているのが恥ずかしい気がして、何とか隠そうと肌蹴た服を集めようとするが、その手をグレイに絡め取られシーツに押し付けられた。


「まだ終わってねーよ」

「へ?」


言われて声を漏らした時にはもう遅く、グレイが首筋に噛みついた後だった。

服の中に侵入し身体を弄ってくる手に思考を奪われる。待てと言おうとしても口をふさがれ息継ぎもままならないまま次へ次へと翻弄され、ナツは訳が分からなくなっていた。


「ッグレイ、ゃあ……ぅ」

「ナツ、気持ちいいか?」

「ん、ぁ……わかん、ねぇよ……っ」


グレイの手が身体のいたるところを撫で回し、感覚が追いつく前に弱い部分に触れられて勝手に身体が反応する。


「キモチイイくせに」

「ひぁっ…ぁ……!」


あらぬところに触れられて、ナツは羞恥のあまり泣きそうになった。

ぐじゅぐじゅと水音がするたびに、鼻に掛った様な声が意識せずに出てくる。抗議しようにもその言葉までも吐息が混ざり、伝えられない。自身扱き上げる手がますます速度を増して、ナツは上がる声を抑えられぬまま快楽に追い詰められた。


「あっ、い、……ん、ぁッ、あぁ!」


身体を震わせると共に吐き出されたものはグレイの手に受け止められた。

浅い呼吸を繰り返しながら、焦点の定まらない瞳にぼんやりとグレイが映り込む。もう何も考えられなくて、余韻に浸るうちにグレイの指が双丘を探るように伝った。柄も言えぬ感覚に思考を取り戻すがもう遅く、予想外の場所にグレイの指が入り込む。浸食されるようなその感覚に身体が粟立った。


「や、ぁ、気持ちっ、悪いっ」


グレイの指を引き抜こうにも、うまく力が入らず何の意味も成さない抵抗を繰り返してしまう。その間にも内側を浸食する指に掻き回されてどうにかなってしまいそうだった。


「ちょっと、我慢しろよすぐに良くなる……と、思う」

「思うって……あ、くっ」


曖昧な返答に何なんだと怒りを覚える。しかし奥へ奥へと侵入してくる指が抗議の言葉を紡ぐ邪魔をする。

急にある一点で止まり、グレイが嬉しそうに口元を緩めた瞬間、ナツは目を見開いて喉を仰け反らせ悲鳴にも近い声を上げた。


「ぁ、くっ、やっ…あ、ぁ!」


生理的な涙が頬を伝いシーツに伝い落ちる。


「ナツ、」

「っ、ぁっ……あ、ひぁっ…ぁっ」


グレイの指が動くたびに、その箇所を掠めるたびに、言い表せない程の快楽が身体を走った。


「……っこわ、い、…ぐ、れぃ…ぁ、んッ」

「わり、やめてやれねぇ」

「ひ、ぁあっ」


ずるりと指を引き抜かれ、いきなりなくなった感触に呆然とする間もなく、熱いものがそこに押し付けられる。


「ナツ、力抜いてろ……ッ」


ずぷっと強引に入りこまれた瞬間、息ができないほどの激痛が走る。


「いた、イ……ぅ…あッ!」


指とは比べ物にならない圧倒的な質量。無理に押し広げられる感覚に、ナツが悲鳴を上げた。痛くて苦しくて、でもどうしてかナツはそれを本気で拒否する事が出来なかった。


「う、ごくなッ……やッ……」

「悪ィ、……ッ」


それは性急な事に対しての謝罪ではなく、止められないという意味での謝罪だった。腰を推し進められ、グレイもまた苦悶の表情を浮かべる。けれど止めることなく、そのまま強引に律動を始めた。


「グレイっ、グレ、イ……い、ぁッ」

「、ナツ……」


グレイの腕に抱かれながら、ナツは痛みに顔を顰めた。しかし首に掛かるグレイの荒い息に、内側がずくんと疼くのを感じて戸惑いを覚えた。微かに痛みの他に何かが身体を走ったと思ったら、急に片足を肩に担がれ、自然と身体が横に傾いて――。


「ぁ、や……っぁ、あ!」


指で触れられた所よりももっと深くを突かれて、がくがくと身体が震える。痛みの中に強烈な快楽が混じり合い――もう、何も考えることができない。思考も何もかもぐちゃぐちゃになって、溶けてしまうんじゃないかと思った。

最後にグレイの言葉が届いて、ナツの意識はそのままふつりと途切れた。










***













疲れ果てて眠ってしまったナツが起きたのは朝方だった。

そんな状態にさせた当の本人が、本当に申し訳なさそうに謝ってくるものだから、ナツはもういいとそっぽを向く。そもそも何されてもいいといったのは自分だったし、グレイを相当我慢させていたのだと思うと仕方ないような気がしたのだ。

それに――


『愛してる』


最後に言われたそれが嬉しくて、全部帳消しにしてしまっても構わない、なんて思ってしまったなんて言ったらきっと調子に乗るのだろうから、決して言わないけれど。











END




















アイス様に捧げます〜!
ERO下手ですみませ!こんなんでも貰って下さると嬉しいです><。それにしても甘い、のかこれは。我慢しすぎていざ手を出すとき欲望先走っちゃったグレイと思っていただければいいなぁ、と。



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