FT短編
□オタグレイ2
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兄はオタクだ。
それも重度の。
一応学校に持っていくものは自重しているらしく普通の物だが、オタク発言を連発して周りに引かれているところをみると持っていっても今さらな気がしてならない。
部屋の棚には女の子のフィギュアが陳列され、本棚も女の子がいっぱい出てくる漫画本がひしめいている。パソコンの中身は二次元の女の子の画像ばかりでベッドの下は…見たくもない。
因みにタンスも二つ持っていて、片方は用途不明のコスプレ衣装が詰め込まれている。
前に着てみてくれと言ってセーラー服みたいなものを持ってこられた時にはホントに死んでくれと思った。
まさか、あのタンスに入っているのって全部俺に着せる為の物じゃ……。そこまで考えて頭を振る。
いくらなんでもそれはないだろう。
そんな兄でも、認めたくないが顔はいい。
弟の欲目?
そんなのあってたまるか。
結構な告白を受けているという情報は友達から教えてもらって知っていたが、今現在、どんな偶然かその告白現場に居合わせてしまった。
現場は科学室の前の廊下で、ナツがいる場所が科学室の中。
補習で居残っていて、やっと終わったと出ようとした時に、女の子とグレイが向き合って立っているところ目撃してしまった。
教室のある場所から離れている科学室は、授業がない時には滅多に人がこない。
確かに絶好の告白場所ではある、が何も自分がいるときじゃなくても…と言いたくなった。
女の子が震えながら手を胸の前で握っている。
告白する緊張もあるのだろう、顔が真っ赤だ。
ああ、それにグレイは目つきが悪いから少し怖いのかもしれない。
それに加えてグレイは……。
(こんな時くらいギャルゲーやめろ……!!)
あんまりな態度に当事者でないナツの方がキレそうだった。
グレイは携帯片手に女の子の前に立ちながら、かちかちかちかちボタンを押している。丁度斜め後ろから一瞬だけのぞいてしまったナツはそれがよく見えてしまった。
本当にデリカシーがないというか自分に正直というか、こんな奴が兄だなんて、とナツは崩れ落ちる。
「、あの、グレイ先輩!」
「……ああ、何」
緊張して少し上ずっている女の子の声。
そんな健気な女の子の声を全然聞く気のないグレイの態度に、ホント止めた方がいい、とナツは女の子に言いたくなった。
「入学した時からずっと好きでした!わ、私と付き合って下さい……ッ」
お決まりの台詞。
でも彼女なりに精いっぱい気持ちがこもっているのがひしひしと伝わってきた。
態度があからさまに興味ありませんと言っているし、きっと断るんだろうな、とナツは思う。
しかし、兄の口から飛び出した信じられない言葉に、ナツの思考は一時停止した。
「悪い……俺、二次元にしか興味がないんだ。」
断るだろうとは思っていたが、まさかそういう台詞になるとは考えもしていなかった。
きっと女の子もだろう。
口を開閉させながら絶句している。
「じゃあな」
いいながらグレイはその場を去っていく。もちろんギャルゲーは続行しながら。
取り残されたナツと女の子は、暫くその場から動くことができなかった。
END
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お題サイト『Frequente』様からセリフお借りしました!
「悪い……俺、二次元にしか興味がないんだ。」