ナツ♀小説
□堕ちておいで
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ジェラールとナツはたった二人きりの家族だ。親戚はいるが、義務で金を援助してくれているだけで、他はなにもしてこないし、それでいいと思う。二人きりで充分満足していたし、今から介入されても鬱陶しいだけだ。妹と二人きりで過ごしたいと思う自分は、重度のシスコンなのだろう。
あまりにも似ていない二人。それでも、戸籍上は同じ両親から生まれたと記されていたから、血の繋がりがあるのは確実なのだろう。
周りからは本当に兄妹なのかと言われるが、余計な御世話だと思う。強いて似ている所を上げるなら、瞳の色くらいだと他人は言うが、ジェラールは少し違う気がしていた。自分の目の色は褐色だが、ナツの瞳は綺麗な琥珀色をしている。妹に抱いている邪な気持ちがそう思わせるのか、蜂蜜みたいに甘そうだとすら思っていた。舐めてみたいとも。それは小さい頃からずっと変わらない。
最近は兄と呼ばなくなったナツに、少し寂しいと感じていたが、ジェラール、と世界で一番好きな声と表情で言われると、そんな気持ちは吹き飛んでしまう。誰に呼ばれても同じ気持ちは起こらない。ジェラールはナツに名前を呼ばれる事が好きだった。
それにナツは毎朝名前を呼んで起こしてくれる。一日の最初にナツの口から出る言葉が自分の名前で、その声で一日が始まるというのは何をおいても幸せな事だ。甘い甘い朝の時間は、まるで同棲しているような気さえしてしまう。
どうしてそんな事を思うかなんて下らない事だ。
ジェラールはナツを妹としてなど、さらさら見ていないのだから。
細い肢体に欲情だってするし、孕ませてやりたいとすら思う。だってそうすれば妹は一生自分の物だ。ただ、とても大事だから手を出さないだけで。こんなままごとみたいな生活で我慢している。
長い時間、兄としての顔を取りつくろうのは大変だった。
だから、たまに男の顔をしてしまうのは許してほしい。
起き抜けにナツの可愛い顔を見たら、欲情してしまうのは当然だろう。男としての生理的欲求だってある。ただ、その所為でナツが顔を赤くして出ていくのも知っていた。兄と呼ばなくなった日から、どことなく様子がおかしいのも気付いていたし、身体的な接触だって減った。
きっと、そういうことなのだということは気付いていた。
計画通りと言えばそうなのだが、やはり寂しい。
だから。
「おはよう、ナツ」
頬に口づけを落として、朝一番にするお決まりの挨拶。途端に真っ赤になる顔が初々しくて、頬が緩んだ。
「お、はよっ!腹減ったから、早くしろよなッ!」
「ああ、今作るから待っていろ」
頬を赤く染めながら、あくまで平静を装うナツ。気付いていないとでも思っているのだろうが、態度の一つ一つが分かりやすい。隠し事が苦手なナツが、必死になっているのを見るのはやはり可愛いらしかった。
もっともっと、気持ちが大きくなるまで待っている。
大きく大きく、限界まで育ったらその時は。
(残さずちゃんと食べてやるから)
END
ドン引き覚悟。ちょっと修正しました。見直ししなかたらあまりにもな文章だったので。といっても大して変わらないのですが^^;