ナツ♀小説

□もって生まれた星回り
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*グレ→ナツ♀(幼少期)














ナツは、それはもう愛らしい顔をした子供だった。

将来はきっと美人になるだろうとギルドの親父連中は口々に言う。

確かに可愛らしいピンク色の髪に、大きな目とそれを縁取る長い睫は、男の様な口調を差し引いても充分に可愛らしいと言うに値する。口は悪くとも、明るくて優しい性格をした彼女は、ギルド内でも将来が楽しみな女の子の一人だった。


そんなナツに現在片想い中のグレイは、とある悩みを抱えている。


というのも、己の些細なミスの所為で周囲の人間にナツへ抱いている恋心がバレてしまったのだ。それからというもの、からかう事が大好きな酔っ払い連中や、あのドSなミラジェーンの揶揄の対象になってしまった。


「まぁ、あれだ!ナツも男みてーな口調治れば、将来めちゃくちゃモテそうだよな!」


ガハハッと下品極まりなく笑いながら、昼間から酒の入ったオヤジどもが会話に火をつけている。今酒のつまみは、将来誰が一番の美人になるかということの様だ。ナツの名前が出てくると、どうしても話に耳を傾けてしまう自分がいる。そして、オヤジどもに頭の中で反論するのだ。


「男口調が治らなくても、ナツは可愛いに決まってる!!」


すぐ後ろから聞こえてきた声に、グレイは肩を揺らす。騒がしいギルドによく響く高い声に、今まで話し込んでいた酔っ払い共も視線を向けた。


「ナツは今のままでも、俺が嫁に貰ってやるから心配ない!ナツの可愛さを一ミクロンたりとも理解できねぇ親父どもは黙ってろ!!」


今まさに思っていた心の叫びを、そっくりそのまま言葉にされて、グレイはぎぎぎと顔を後ろに向けると、そこにいたのは予想通りの人物だった。


「よお、グレイ。今日も恋してるか?」

「お姉ちゃん……」


わざとらしく手を上げて片目を瞑って見せたのはミラジェーン。そしてその横でリサーナが申し訳なさそうな顔で立っていた。


「〜〜ッ、変なアテレコすんな!!んなこと思ってねーしよ!」

「本当かぁ?まさにそんなこと思ってるって顔してたんだけどな」


にやついた顔が非常に癪に障るが、言われた事は図星だった。人の心をそのまま覗いたようなミラジェーンの的確な読みに恐怖すら抱く。もしくは、自分はそんなに分かりやすい表情をしていたのだろうか。


「まーグレイが好きになっちまうのもしょうがないよな。ナツ可愛いもんなー」

「や、やめようよ、お姉ちゃん」


ニヤニヤとしながらしながら視線を送るミラジェーンに、とうとうグレイの堪忍袋の緒が切れた。


「るせー!ナツの事なんか好きじゃねえっつってんだろ!!」


しかし、得てしてこういった場面では不幸が重なる事が多い。

生まれ持った境遇なのか、いつもいつもいつも、こういうタイミングの悪い時にばかり、一番会いたくない人物と会ってしまうのだ。


「あ、ナツ」


叫んだ途端に、リサーナが入口の方を見た。グレイもつられて視線を向けると、丁度クエストから返ってきたナツが扉を潜る所でこちらを見ている。その瞬間、びしりと身体が凍りついた。


「別に俺もお前の事なんか好きじゃねーけど」


そう言うと、ナツはマカロフにクエストが完了した事を伝え、そのまま家に帰ってしまった。言い訳する暇もなく。


「あーあ」


ミラがわざとらしく肩を竦めるが、それに対して構う気力も沸いてこない。

好きじゃない。グレイの脳内ではナツの言葉がしつこいくらい反復していた。


「ぐ、グレイ良かったね。嫌いって言われなくて」


リサーナの慰めにもならない言葉を聞きながら、凍りついた身体に亀裂が入っていく。もうグレイのハートは粉々だった。


「終わったな」


酔っ払った親父の誰かがそう呟くと、ギルドはいつもの騒がしさを取り戻していく。凍りついたまま机にとっ伏しているグレイを放って。




***




(……?何かずきずきする)


帰路についていたナツは、何やら違和感を覚えて眉を寄せた。しかし、そんな痛みも気の所為だと思い直すと、次の瞬間には今日の夕飯を何にするかで頭が一杯になっていたのだった。
















END

2000hit部屋にアップする筈だった物の没ネタでした。勿体ない症なのでUPしときます^^



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