短編2

□絞殺モラトリアム
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あなたが好きです。
そう言えば、彼は口を結んで、それから困ったように笑った。


オレも好きだよ。
そう答えてくれたけど、それがオレの気持ちとは違う意味を指しているのは理解できた。


オレの恋は終わったんだ。


だからといって彼との――ナツさんとの繋がりが消えたわけではなく、告白なんてなかったかのように一緒に過ごした。それが嬉しくもありけれど虚しくもあり、捨てきれない一抹の期待の所為で今でも思いを持て余したまま。


ナツさんはそうとも知らずに、心底信頼しきった様子で笑っている。


ねえナツさん、オレは今でもあなたが好きだよ。
知らないでしょ。
隣にいるのはナツさんを狙っているケダモノなんだよ。
ねえ。


心の中でそう問いかけては、ナツさんに悟られないように何気ない顔で取繕う。その繰り返し。

それがどれだけ虚しいのか、ナツさんは純粋な人だからきっとこんな気持ち分からないよね。


だから襟から覗く細い首に手をかけたくなる気持ちもきっと分からないだろう。
その首に触れて指に少し力を込め気道に食い込ませれば、その数分でナツさんは事切れるだろう。その時はオレの腕の中で。そんな絶望と幸福の狭間の夢を見ていることなど、きっと絶対に理解してはくれない。




だから、ねえ。




その甘い夢に身を委ねない内に、早く堕ちてきて。


















title/bird of passage




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