FT短編2

□愛があれば!
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好きだったら何でも受け入れられるよ。なんだってそこには愛があるからね。

詳しくは言えないけど、ルーシィのことで悩みがあって。とそう言ってきたナツに、ロキは確かにそう言った。その時の自分はそこまで親身になって考えてはいなかったと思う。

何せナツは恋愛初心者だったし、悩むと言ってもそこまで深いものではないだろうと思っていたからだ。

ロキは以前から約束していた女の子とデートをしようと、またもルーシィに無断で星霊界から出てきていた。

最近付き合い始めた二人は、部屋の中に入り浸る事が多い様だ。恋人達に水を差すような事はしたくなかったので、ロキは様子を窺うと言う様なデリカシーのないことはしていない。だからきっと二人で仲良く――まあ色んな事をしているのだろうと思っていた。


「わぁ!やっぱりかわいい!」


いつも通りそっと出て行こうと玄関へ向かっていたのだが、ルーシィの楽しそうな声と、ぱちんと掌を叩いた音が聞こえてロキは思わず立ち止った。


(かわいい?)


ルーシィは間違いなくそう言った。


「思った通りだわっ!あ、あとこれも……」

「な、なあルーシィ。もうやめねぇ?」


楽しそうなルーシィの声と、戸惑った色を滲ませているナツの声。どうにも気になって、玄関に向かっていた足をルーシィの部屋へ向かわせた。


「何言ってるのよー。せっかくここまでしたのに」

「や、でもよ…あとで出かけんだろ?」

「うん。だからそのままで、ね」

「は?マジで!?」


ルーシィの部屋の前で、ドアノブに手を掛けながらロキは入るべきか入らぬべきか悩んでいた。しかし、その間も聞こえてくる会話が途轍もなく気になる。

なぜだか、そう以前相談された時のナツの深刻な表情が脳裏に浮かび、嫌な予感を感じながらもロキはドアノブに手を掛けた。


「「ロキ!」」


天の助け!と言わんばかりに目を輝かせたナツがこちらを見ている。同じくルーシィも声を上げたのだが、ロキはナツから視線を外すことができなかった。


「ロキ、助けてくれ!」


声は、ナツだ。間違いなく。


「どうロキ!かわいいでしょう!」


自信満々にのたまうルーシィに、ぽかんとしながら「うん、そうだね」と答える。涙目で助けを求めてくる彼は、ナツのはずなのにナツではなかった。


「このままでデートするの。あんたいっつも勝手なことばっかりするんだから、たまには私のお願い聞いてよ」

「絶対ヤダ!これだけは受け入れらんねぇ!なあロキ、コイビトって普通こんなのしねぇよな?」


瞳をうるうるさせて見上げてくるナツに、思わず口を覆う。そして以前相談された時のナツに心の中で謝った。ごめん、もっとちゃんと聞いてあげていればよかった。
でも。


「かわいいね、ナツ」

「って何、顔赤くなってんだよ!?つか見んな!近づいてくんな!」

「ねえルーシィ。僕もデートに混ざっていいかな」


今のナツは百戦錬磨と名高いロキから見ても、とても可愛らしかった。

可愛らしく化粧を施されて、いつも跳ねている髪は気持ち撫でつけられ、前髪を花の細工の付いたピンで止められている。服もラインが分からないようなふわりとしたものを着こんで、一見すると女の子だ。少なくともロキが口説きたいと思う位かわいい。


「じゃあ三人でデートしましょ!」

「嫌だからな!こんな恰好で外にでられるかよ!」

「まあまあそんな事言わずに。状況を楽しもうよ、ナツ」


まさかルーシィにこんな趣味があったとは思わなかったが相手がナツなら納得がいく。まあ自分にされるのは絶対に勘弁願いたいが。


「絶対いやだあああ!」


可哀想に、抵抗も虚しく星霊コンビに外へ連れだされたナツは、多くの人に目撃されながらも(強制的に)デートを楽しんだのだった。









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