長編
□あなたのためにできること3
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※エロ入ります
※長い
※18歳以下の方は見ないで下さいね
宿屋に着き部屋に入った途端、ナツは糸が切れたように眠ってしまった。
ハッピーは寝台に倒れ込んだナツに毛布を掛けてやると、先ほど説明しそびれたことをスティング達に伝えに来ていた。
ナツは依頼人に魔物の討伐が完了したと伝え、報酬の支払いのことを話し、スティング達を待たせているからすぐに出て行こうとしたらしい。けれど依頼人が疲れているだろうからと紅茶をいれ、せっかくいれてくれたものを断るわけにもいかず少し口に含んだ。
「そしたら急にナツが身体を抱えて具合悪くなって……依頼人の女の人も変なふうに笑ってて。オイラその人が何言ってるのかよく分かんなかったけど、ナツの顔色が悪くなったから、何か変な事されそうなのは分かったんだ」
ハッピーはナツを助けるために女に体当たりして、そのままナツを抱えて屋敷の窓から飛び出したらしい。先ほど裏手から出てきたのは、落ちた先が丁度そこだったからか。
「ちょっとふらふらしてたけど歩けるみたいだったから大丈夫かなって思ったんだけど、今も何だか苦しそうで……」
「そっか。がんばったな、ハッピー」
「二人が無事で何よりですよ、はい」
「あい……」
声を震わせて落ち込んでいるハッピーの頭に手をのせると、スティングは立ち上がった。
「オレちょっとナツさんの様子見てくるから、ハッピーとレクターは休んでろよ」
あとは頼むとレクターを見ると、任せて下さいと誇らしげな顔をした。頼れる相棒だ、と改めて思った。
寝ているかもしれないが、控えめにノックをして部屋の中へと入る。
部屋に入ってすぐに見える寝台の上に横たわるナツは苦しげに呼吸をしながら、耐えるようにシーツを握りしめていた。
「ナツさん!」
「スティング……?」
容態が悪化しているのが分かり慌てて駆けつけると、うっすらと目が開きうるんだ目がスティングを見上げる。
「大丈夫か!?すぐ病院に……っ」
ナツさんの手を掬いあげてぎゅうっと握った。
手から伝わってくる熱はあまりにも高い。
「ごめ、ん…今ヘン…だから、でもきっとすぐ良くなるから……ほっといてくれ」
「ほっとけるわけないだろ!」
こんなになってまで強がるナツに、スティングは憤りを隠せなかった。
初めてこんな風に触れた手は弱々しく震えていて、先ほど魔物を屠った力強さは消え失せている。握った手が自分の手に簡単に収まってしまって、ナツがどれだけ強くともやはり女性であるということを思い知った。
「ごめん、でもナツさんが心配で……」
怒鳴ってしまった事に謝ると、恐る恐るナツを見つめる。けれどそこに怒りは感じられず具合が悪いと言うのに笑みが浮かんでいた。
「ありがとな。でも大丈夫だから」
「ナツさん……」
こんな風になっても助けを求めないなんて。
少しくらい弱音を吐いてもいいのに。どうして。
「お願いだから少し位頼ってよ……じゃないとオレは」
自分が情けなくて堪らなくなる。こんなに近くにいるのに好きな人に何もしてやれないなんて。
ナツの手を引き寄せて、自分の頬に押し当てる。異常なほど熱い体温に胸がしめつけられるようだった。
そんなスティングの行為にナツは目を丸して、居心地悪そうに視線を左右に揺らす。握られていない方の手をおずおずと控えめな動作でスティングへと伸ばした。
「ナツさん?」
「ごめん…っ…ちょっと、こうしてて」
ナツはスティングへの首へ手を伸ばすと、縋るように身体を寄せる。香るナツの匂いにスティングの心臓がどくりと大きく鳴った。
「ごめん、気持ち悪いよな……」
「んなことねぇよ……あるわけ、ない」
どくん、どくん、と心音がいつもより大きく脈動している。
ナツが自分に縋っている。
他人の体温に安心してか、スティングの肩口に顔を埋めて甘えるようにすり寄る姿はまるで子供のようだ。けれど、紛れもなくそれは自分が好いている女で。
思っていたよりもずっと細くて、柔らかい身体に腕が震えた。堪らずぎゅうと抱きしめると、ナツは小さな吐息を漏らしたが離れていく様子はまるでない。
やっぱり病院に――でも、こんなナツを誰にも見せたくない。
背中に回した手を撫でるように滑らせると小さな声を漏らして震える。
何となく、分かった。
これは、ただの発熱なんかじゃない。
浅い呼吸の中に、色を滲ませた甘いものが混じっている。スティングの手が身体を撫でるとひくりと微かに腰が揺れた。
「ナツさん……」
欲情してる。
ドクンと、心臓が激しく鳴った。