□Innocent boy
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『幸村くんは特別だから』と距離を置かれることが多かった。
俺もみんなと同じようにテニスをしているはずなのに…。


その日は小学生部門の、テニスの大会があった後だった。
俺は優勝した。そんなの、いつものことだった。
俺とテニスをする相手はみんな、試合の途中で戦意を失っている。
勝つことがあまりに容易くて、勝利の喜びも、テニスの楽しさも感じられなかった。
そんなときだった。試合会場から帰っているときにたまたま見かけたテニスコートに彼女がいた。
コートに近づいて少し見ていたけれど、どうやらテニス歴は長くないんだろうということがわかった。
…だけど、すごく楽しそうにテニスをしているから。
俺はしばらく彼女を見ていた。
彼女が打ち損じたボールが俺のそばに転がってきて、俺はそれを拾って彼女に渡した。
「ありがとう!」と笑ってまたコートに戻ろうとした彼女に、俺は声をかけていた。

「ねえお姉さん、俺とテニスしない?」

なんでなんだろう、彼女は初心者で絶対に俺より弱いのに。
彼女とテニスをしてみたいと感じたんだ。
驚いた様子を見せたけれど彼女は俺の誘いを受けてくれた。
…もちろん、相手にはならなかった。だけど、彼女はずっといきいきとプレーしていた。
圧倒的な実力差があった相手はみんな、俺のことを怖がるのに。
だけど彼女は試合が終わったあとも、態度を変えなかった。「すごく強いんだね!私ももっといっぱい頑張らないと」と純粋な笑顔を見せてくれた。
テニスをしてこんなに胸が熱くなったのは久しぶりかもしれない。
彼女のそばにいると、俺は大事な気持ちを忘れずに済むかもしれない。
もっと…一緒にいたい。

「お姉さん、名前なんていうの?」






ねえ、桜乃ちゃん。俺が神の子と呼ばれていることを知っても、君にとって俺は一つ年下のただの「精市くん」っていう男の子なんでしょう?
君のその態度が嬉しくて、だけど今はちょっとだけ不満なんだ。

神の子とか、そんなふうに呼ばれたいわけでは決してないけれど。

「ずっと…俺のことを考えててよ」

少しだけ俺のこと、異性として意識してほしいな。

…なんてね?


End
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