□夕日に包まれて
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※2014年ブン太誕生日話の「春の恋便り」の続編です。





1年前の今日…4月20日。あの日は休日で、私はテニスクラブで練習していた。
同じクラブにいる丸井さんも一緒に練習していたんだけど…そのときに今日が丸井さんの誕生日だってことを本人から聞いて知った。

『一言でいいから、お前に誕生日を祝って欲しかったんだ』

そう言った丸井さん。
どうして私に?と、尋ねると、丸井さんは『ほんと鈍感だよな』と笑って…そして。

『お前が好きだから…だよ』

暖かな春の風と共に私に届いたその言葉に、私の鼓動はどうしようもなく速くなった。



あの日から、1年が経った。
丸井さんの突然の告白に驚いてしまって、どう答えたらいいか分からなくて困っていると、丸井さんは優しく微笑んで『無理に答えなくていいって。ただ、知っていてほしかったんだ』と言ってくれた。

丸井さんはその後も、前と変わらない態度で私に接してくれたけれど。
私は、それまでよりずっと丸井さんのことを意識するようになって…。

優しいお兄さんみたいな存在だった丸井さん。すごく素敵な人で、憧れていた。
恋愛対象だと意識をしてから…その憧れが恋に変わるのに、時間はかからなかった。

だけどいざ自分の気持ちを伝えようとすると緊張してしまって、結局あの日から1年が経ってしまった。

…今日は、丸井さんのお誕生日。



「…丸井さん、誕生日おめでとうございます!」

「…竜崎!?…びっくりした。」


立海の校門の前で、丸井さんを待っていた私は、丸井さんが出てきたと同時に声をかけた。


「すみません、何も言わずに来てしまって…。当日にお祝いしたくて…」

「いや、びっくりしたけど嬉しいぜ。連絡してくれれば俺から会いに行ったのに、立海まで来てくれて…ありがとうな」


そう言って丸井さんは笑ってくれた。
丸井さんの笑顔を見ると、胸がきゅっと苦しくなる。

私は用意してきたプレゼントを丸井さんに渡してから、「ちょっとお話したいことがあるんですけど、お時間ありますか…?」と切り出した。


「話?いいぜ、どこか寄る?」

「い、いえ…あの、二人きりに…なりたいですけど…っ」

「…わかった。海岸沿いなら誰もいないと思うから、行くか」

「は、はい」


場所を提案してくれた丸井さんに案内してもらって、私たちは海岸沿いに向かった。

いよいよ、そのときがくる。
今日、私は決心をしてきた。
1年も経ってしまったから、気持ちが変わることだってあると思う。
でも、たとえ丸井さんの気持ちが変わってしまっていても。
私の決心は変わらない。
…1年前に丸井さんがしてくれたように、
私の気持ちを、伝えるんだ。
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