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□セーフorアウト
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「問題はどこからが『手を出す』に入るかじゃな〜」
部員たちはそれぞれ練習に入り、仁王は共に練習をしている柳生に話しかけた。
柳生はすっと眼鏡を上げ、仁王に向き直る。
「竜崎さんのことですか?」
「他にないじゃろ。たぶん話すのはセーフじゃろうな。急に俺らが避け始めたら、傷つくのは竜崎じゃし」
「…今までどおり友人として接している分には問題ないのでは?」
「甘いな。柳生、ちょっと来んしゃい」
仁王はそう言って脇で真剣に見学をしている桜乃に近づく。
柳生は訳がわからないながらも、仁王の後に続いた。
「よぉ、竜崎。」
「あ、仁王さんに柳生さん。」
「相変わらずテニスに熱心なのですね。良い心がけだと思いますよ」
「えへへ。ありがとうございます〜」
「そうじゃな。本当に偉いな〜、お前さんは」
仁王はそう言って桜乃を頭をなでなでと撫でた。
―――ぎんっ!!
「「っ!!………」」
痛いほどの鋭い視線が仁王と柳生の二人に刺さり、仁王はぴたっと桜乃を撫でていた手をとめ、柳生の方も表情には出さないもののかなりの冷や汗をかいていた。
(…ほ〜れ、やっぱり来た)
(仁王君…確信犯ですね)
当然その視線を送っていたのは少し離れた場所にいた幸村であって、そしてそれも当然気付かない桜乃は、さっきまでとは何か違う目の前の二人の様子に「?」を浮かべていた。
「…じゃ、俺らは練習戻るぜよ」
「…失礼しますね、竜崎さん」
「あ、はい。お二人とも練習頑張ってくださいね」
柳生と仁王は笑顔で自分たちを見送る少女に優しく微笑みを返してから視線から逃れるようにそそくさとその場を去った。
「たとえ友人としてでも頭を撫でるのはアウトみたいじゃな。結構なスリルが味わえたぜよ」
「…仁王君、あなたという人は…そのスリルに私まで巻き込まないでください」
桜乃から離れた二人からはそんな会話がなされていた。