最強チーム編

□初めての練習試合
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「よ、お疲れ、竜崎。いい試合だったぜ」

「…ごめんなさい…負けちゃいました」

「あの乾先輩から1ゲーム奪えたんだから、上出来なんじゃない?」


乾は一度青学のレギュラーを落ちてから、怒濤の勢いで成長し全国大会でも活躍を示した実力の持ち主。
その乾から1ゲーム奪えたというだけで、桜乃にとっては大健闘である。


「でも…」

「大丈夫やって!」


それでも申し訳なさそうな顔をする桜乃に、金太郎はラケットをもってにっこりと笑う。


「ワイガ勝てば、チームの勝ちやろ?任せとき!」

「遠山くん…」

「よっしゃー!勝ったモン勝ちやでー!」


強気な笑顔で勝利宣言し、元気に自分の学校のスローガンを叫びながら金太郎はコートに駆けていく。


「…なんかめちゃくちゃ役得じゃねえか?アイツ…」

「……」


ただの野生児だと思ってたけど、もしかしてアイツが一番厄介なんじゃ…?


「頑張って!遠山くん!」


天然の恐ろしさに気付き始めた切原とリョーマの横では、桜乃が金太郎にエールを送っていた。



「んふっ、よろしくお願いしますね」

「よろしゅー!」


ついに試合は第3試合。
シングルス1は金太郎VS観月。

ラケットを回し、サーブは観月に決まる。



「…遠山金太郎。強豪大阪四天宝寺の期待のルーキー。んふっ…調査済みですよ」


怪しい笑みを浮かべながら観月はサーブを打ち、試合は始まった。

金太郎は独特の野性的動きでボールを打ち返していく。

両者一歩も引かず、試合は流れていった。


「んふっ、ここはあなたが最も苦手なコース!」


長く続いたラリーの途中、観月は自身が調査した金太郎の苦手コースにボールを打ち込む、が。


「せやっ!」


天真爛漫なその動きに死角なし!とでもいうように金太郎はコートを駆けて軽やかにボールを返していく。


「なっ!?」

(ま、まさか…!)

自分のデータが効かないことに衝撃を受ける観月。
その後も何度となく調査したはずの苦手コースに打ち込むものの、金太郎はすべて拾っていた。


「すごい、遠山くん…」

「反則並みの身体能力だな、あいつ…」

「あれじゃデータとか無意味っスね」


リョーマの言う通り、大阪野生児の予測不能な野性的動きの前に、観月のデータはまったく意味をなさないのであった。


その後も金太郎優勢に試合は進み、ついに…


「とやっ!」

「くっ…」

マッチポイントで金太郎が制し、試合終了。


「よっしゃー!勝ったでー!」

「うん!すごかったよ遠山くん!」


ぴょんこぴょんこ跳ねている金太郎に桜乃はいち早く駆け寄って、一緒に勝利を歓ぶ。
後からリョーマと切原も二人のところにやって来た。

「こんでワイらのチームの勝ちやな!」

「ま、俺がいんだから当然だろ」

「二度と切原さんとダブルスは組みたくないっすけどね」

「おー気が合うな、俺ももう絶対お前とは組まねー」


こんなときにさえ言い合いをしている二人にも、桜乃は笑顔を向けた。


「リョーマ君と切原さんのダブルスもすっごくかっこ良かったですよ!」

「「……」」


可愛い可愛いリーダーの「かっこいい」発言に、頬を染めてつい言葉をつまらせてしまう思春期ボーイ二名。


「本当に、本当に嬉しい…!みんなのおかげだよ…」


ぼろぼろと涙をこぼし始める桜乃に、女の子の涙に慣れていない男三人はびくっとする。


「ど、どっか痛いん?竜崎」

「さ、さっきボールぶつけたとこか?それとも転んでとこか痛めたとか…」

「あ…ううん…違うんです、つい…嬉しくて…」


心配する金太郎と切原に泣きながら笑顔を見せる。


「大袈裟。まだ練習試合なんだから」

「あう…、ごめんなさい」

リョーマの素っ気ない言葉に桜乃は涙をごしごしと拭く。

「…泣くのは、大会で優勝してからにしなよ」

「! リョーマ君…」

「優勝するまで勝ち続けるんだから、いちいち泣いてらんないでしょ」

「う、うん。そうだね…そうだよね!」


涙を流すのは、みんなと一緒に優勝をしたとき。

私は今日は負けちゃったけれど…、これからもっと頑張って少しでもみんなの力になれるように頑張ろう。

桜乃は改めて、心にそう強く決めた。


「あ〜〜、腹減ったわ〜」

「あ、おむすび作ってきたよ」

「ほんまか!?よっしゃー!竜崎のおむすびー!」



試合で疲れて腹ペコな男三人は、桜乃が早起きして作った大量のおむすびにがっついていた。


「ちょっと作りすぎちゃったんだけど…」

「余裕余裕!んぐんぐ」

「メッチャ美味いでぇ〜!んぐんぐ」

「まあ、まずくはないよね。んぐんぐ」



桜乃の手作りのおむすびを他のやつより多く食べようという少年二人+純粋に桜乃が作った美味しいおむすびをたくさん食べたいという少年のおむすび争奪戦。

大量に作ったおむすびが怒濤の速さで減っていく光景を見て桜乃は嬉しく思いながら、あまりの速さにチームメイトたちの心配もしていた。


「み、みんな、ゆっくり食べてね。喉につまらせちゃうから…」

「んぐぐぐ〜〜!」

「きゃー!!遠山くん!!」


言ってるそばから喉につまらせた様子の金太郎。
桜乃はお茶!お茶!と慌てている。


「ごくっごくっ…ぷはぁ〜〜」

「だ、大丈夫?」

「ったく、情けないぜ。喉につまらせるなんてよ…んぐぐぐ!?」

「まだまだだね…んぐぐっ!!」

「きゃー!?切原さんっ!リョーマ君まで〜!!」



こうして初めての練習試合にて勝利を収めた桜乃たちは、仲良くにぎやかに桜乃の手作りおむすび争奪戦を繰り広げていたのだった…。





【初めての練習試合】

(みんなってば、よっぽどお腹すいてたんだなあ)




end

思った以上に長くなった上になにこのグタグダ感(^^;)
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