□桜乃お誕生日話集
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「竜崎、今日誕生日でしょ」

「…え?」


薄暗い帰り道。
最近はいつも、部活が終われば竜崎と一緒に帰っている。

俺が唐突にそう切り出せば、竜崎は驚いた顔になる。


「リョ、リョーマ君…知ってたの?」

「…まあね。はい、これ」

「…?」

「プレゼント」

「え…えぇえ!?」


用意していたプレゼントを竜崎に渡せば、竜崎は更に驚いていた。


「え?え…、なん、なんで?」

「なんでって、竜崎もくれたじゃん。俺の誕生日のとき。」


竜崎がくれた、手編みの手袋。
あの日からずっと使っている。


「そ、そうだけど…」


竜崎は渡したプレゼントを凝視して、難しい顔をしている。


「信じられない…」

「は?」

「夢?夢じゃないのかな…?リョーマ君が誕生日にプレゼントくれるなんて…」

「……」


俺は無言で、竜崎の長すぎるおさげの片方を軽く引っ張った。


「い、いたっ」

「夢じゃないでしょ」

「あ、う、うん…」


竜崎は俺と手に持ったプレゼントを交互に見る。


「あ、ありがとう…リョーマ君…」

「…うん」

「本当に、ありがとう…!すごく嬉しいよ!」



本当に嬉しそうに、…輝かんばかりの笑顔で、俺にお礼を言ってくる。

渡して、良かったと思った。


「…誕生日、おめでとう」

「うん!ありがとうっ」



大切そうに、俺が渡したプレゼントを抱きしめている竜崎。


竜崎への誕生日プレゼントとして用意した物。


…だけど、

プレゼントに込めた気持ちは「おめでとう」だけじゃない。


「わぁ…可愛いネックレス!大切にするねっ」

「ん」


言葉じゃまだ、伝えられない。

ねえ、少しでもいいからさ。

もうひとつの意味も、

感じとってくれないかな?




【ふたつめの意味。】


(まあ…、竜崎にそれを期待するのは無理かも)(え?何が?)




end


リョーマ君は言えない気持ちをプレゼントに込めたようです。
何が直接言えないのかは、ご想像におまかせします。←

前に書いたリョーマ誕のお話と微妙に繋がってたりします。微妙に。


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