最強チーム編

□小さくて強い背中
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「よし、ボールも買えたし…コートに戻ろっか」

「せやな!戻ろー」


大量にボールを買って、桜乃と金太郎は店を後にしていた。
金太郎は桜乃が持つボールをちらりと見る。



「竜崎、重いんちゃう?ワイが持つで?」

「え?大丈夫だよ」

「そうなん?ならええんやけど…」

「うん、気を遣ってくれてありがとう」

「……、やっぱあかん」

「えっ?……遠山くん?」



金太郎は桜乃からボールが入った袋をバッと奪いとった。


「『女の子が重いもん持っとったら、持ってあげなあかんで』って白石に言われてんねん」

「そ、そうなの?」

「うん。『ただでさえ、金ちゃんは力有り余っとんやから』とも言われてんねん」

「そ、そう」

「せやから、ワイが持つ!」



にっ、と笑ってそう言う金太郎に、桜乃も笑顔を返した。



「ふふ、それじゃお願いするね。ありがとう、遠山くん」

「へへっ、任せとき!」



にこにこ笑い合いながら、道を歩いて行く二人。
道行く人たちに『可愛らしいカップルだなあ』なんて思われていることは、微塵も気付かないで仲良く談笑しながら帰り道をたどっていた。




――どんっ


「きゃっ」


すれ違い様に見知らぬ男性と肩をぶつけて、桜乃はドサッと地面に倒れ込んだ。


「竜崎っ!」

「ちっ…気を付けろ!」

「すっ、すみません」



ちらりと桜乃を見た後悪態をついて過ぎていく男性。
金太郎は桜乃を心配そうに見てから、通り過ぎていった男性の背中を睨む。



「なんやあいつ…あっちからぶつかってきたやん!」

「えっ?遠山くん?」

「ちょお追いかけてやり返してくるっ!」

「ま、待って!遠山くんっ!!…痛っ!」


追いかけようとした金太郎を止めようと、桜乃が立ち上がろうとして、足に痛みを感じうずくまった。

金太郎は、はっとして桜乃に駆け寄った。



「竜崎っ!…痛いん?立てへんの?」


金太郎は桜乃の近くにしゃがみこんで心配そうに桜乃の顔を覗き込んだ。



「大丈夫…、ちゃんと立てるよ」


桜乃は金太郎に笑って答えると、無理やり立ち上がった。



「…竜崎っ、」

「そ、それに、ちゃんと歩けるしっ」



明らかに無理をしている歩き方に、金太郎は桜乃を止める。



「竜崎、ほんまは歩けないんやろ?ワイが背負ったる」

「え…?あ、と、遠山くん!?」



金太郎は有無を言わさずに、桜乃を背負っておんぶの状態にする。



「だ、だ、大丈夫だよ!?おろしてっ…、重いでしょ!?」

「平気やって」

「で、でもっ、」

「えーから!ワイ、力有り余ってるんやし」

「そ、それは…でも…」



何を言っても降ろす気の無さそうな金太郎に、桜乃は戸惑いつつも諦めて大人しく背負われていた。




「ごめんね…ボールも持たせておいて私まで」

「ええって!だって竜崎めっちゃ軽いし」

「そ、それは遠山くんが力持ち過ぎるんだよ」

「そうなんか?竜崎めちゃめちゃ軽いんやけどなぁ。」

「うう…本当はそんなことないんだよ…」

「ふーん?わからへんわ」



金太郎は桜乃を背負いながら、道を歩いていく。
道行く人の視線を受けていたが、金太郎は性格上、桜乃は自分の状況で精一杯で、二人とも周りの視線はには気付かずにいた。



(遠山くん…すごいなぁ。細いのにすごい力があって…)

金太郎のテニスは野性的で、力強いパワーテニス。
桜乃も金太郎の球を受けたことがあったが、手加減をしてくれたというのに一度ラケットを飛ばされたこともあった。


(筋肉も近くで見るとすごいなぁ。私のことも軽々持ち上げたし…)


この小さな身体から、あのすごいテニスが生まれるんだ、と桜乃は改めて思った。


(私と同い年で、背丈も変わらないのにな……)



桜乃は金太郎の小さな背中に背負われながら、そんなことをぼんやりと考えていた。




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