最強チーム編

□小さくて強い背中
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午後の3時を回る頃、河川敷のテニスコートにはラケットでボールを打つ音がリズム良く響いていた。


「まだ、帰って来ないんすかね、あの二人」

「さあ、なっ」


(不本意にも)二人だけの練習をすることになったリョーマと切原は、打ち合いをしながら金太郎と桜乃の帰りを待っていた。


もやもやとする気持ちをボールにぶつけ、力強いラリーが続く中、一際明るい少年の声がコート中に響いた。



「ボール買ってきたでー!」


やっと帰って来た!と二人はラリーを中断し声の主へ視線を移した。



「遅かったじゃねーか……って、」

「……何してんの?」

「何がや?」

「あ、あのっ」



金太郎が桜乃をおんぶしているという光景を凝視している二人に、金太郎の代わりに桜乃が背負われたまま横から顔を出して説明する。


「ボールを買った後…私が転んで足を痛めちゃって、遠山くんが背負ってくれたんです…」

「そ、そうなのか…それで竜崎は足、大丈夫なのか?」

「はい。少し痛めただけなんで…」

「ふーん…冷やしときなよ、足」

「うん、わかった」



複雑な心境の中桜乃の心配をするリョーマと切原をよそに、金太郎が桜乃を背中に乗せたまま言った。


「なんか…竜崎って柔らかいんやな〜」

「えっ…」

「「…………」」


金太郎の発言に、ピシッとリョーマと切原のこめかみに青筋が入る。

金太郎の『柔らかい』発言に二人が耐えていた感情が爆発した。

怪我をした桜乃を背負うのは仕方ない、でも…。


(何でこいつばっかり役得なんだ!)

(しかもおんぶとか…、かなり密着するじゃん!)


自分が一緒に行っていれば桜乃が転んだとき助けたのは自分だったのに!という感情や、金太郎の『柔らかい』発言に対しての羨ましい!という思いがリョーマと切原の脳内を駆け巡っていた。



「おい、遠山!今から勝負だ!」

「へ?」

「ちょっとずるいですよ切原さん。俺が先っす」

「何やわからんけど…、勝負するでー!」




悔しさ羨ましさをそのまま金太郎にぶつけようと勝負を挑んだ切原とリョーマに、金太郎は何も知らずに乗り気だった。



「つか、いつまで竜崎をおんぶしてる気だよっ」

「さっさと降ろしたら」

「あ、せやったせやった」

「ご、ごめんね遠山くん、ありがとうね」



金太郎は桜乃とボールをベンチに降ろして、「勝負やー!」と叫びながらぴょんぴょんと跳ねている。


(遠山くんが言った『柔らかい』って…ぷにぷにしてるって意味かなぁ?)


どっちが先に勝負するかでもめ始めたリョーマと切原、その横で二人を待っている金太郎を、桜乃はベンチで眺めながら、金太郎の発言に落ち込んでいた。


(『軽い』って言われたけれどやっぱり遠山くん基準だしなぁ…痩せなきゃなぁ…)



金太郎の何気ない発言に、悩まされた三人だった。





【小さくて強い背中】

(遠山くんが力もちだからって、甘えてちゃ駄目だよね)




end
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