□すべてがハッピーサプライズ
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「滝さん…あの、今度一緒に映画を観に行こうっていう約束、じゅ、14日にしませんか?」

『14日…? うん、いいよ。そうしようか』

「! あ、ありがとうございますっ」


青学テニス部顧問の竜崎スミレの孫であり、よく手伝いをしている桜乃は、青学と付き合いがある氷帝テニス部の滝萩之介と親しくなった。
二人は何度か一緒にでかけるほど仲が良かった。
…しかし、今まではすべて滝が桜乃を誘っていたのだが。

14日の今日の約束は、数日前に電話で、桜乃は初めて自分から滝を誘ったものだった。



「…面白かったね、映画」

「そうですね!原作も読んでみたいです」


放課後に待ち合わせをして、約束をした映画を見た二人は映画館を出て商店街を歩いていた。

桜乃はちらりと滝を見上げながら、少しそわそわしていた。

(実は今日誕生日なんです、なんて…言うのは図々しいかな…)

今日は1月14日、桜乃の誕生日だった。
桜乃が今日滝を誘ったのは、誕生日に想い人と過ごしたいという思いからだった。

…しかし、桜乃は滝に今日が誕生日であることを伝えてはいない。
「おめでとう」の一言が欲しいだけで、プレゼントとか、そういう類のものを望んでいるわけではないのだが、伝えることでそれを求めているように見られるのは嫌だった。
それに優しい滝は気をつかって、何かを用意してくれるかもしれない。
そう思うと、なかなか桜乃は言い出せなかった。


「この後、まだ時間ある?良かったら、ご飯を食べにいかない?」

「…あっ、はい!大丈夫です!」

「良かった。…このあいだできたカフェレストランがあってね。なかなか評判みたいだから、桜乃ちゃんと行きたいなって思っていたんだけど、そこでいいかな?」

「わあ、そうなんですか。是非行きたいですっ」


滝からの提案を、桜乃はすぐに了承した。
少しでも長く、滝と一緒にいれることが嬉しかった。
桜乃が答えると、滝は「良かった」優しく笑った。

滝の優しい笑顔を見たとき桜乃は、この人のことが好きなんだと、あらためて思った。
好きな人と誕生日を過ごせて、桜乃は本当に嬉しかった。
…この人が自分の誕生日を祝ってくれたらどれだけ幸せだろう、と桜乃は思った。


(…「おめでとう」の一言だけでも、聞きたい…、だめかな…?「今日誕生日なんですよ〜」なんて、ちょっと何でもない感じで軽く言えば…!)

桜乃は誕生日だということを告げる決意をして、滝を見上げた。


「あ、あの!滝さん!」

「うん?なに?」

「そのですね、実は私、今日たん…」

「待って、桜乃ちゃん。俺から言わせてくれる?」

「えっ?」


桜乃が誕生日だということを告げようとしたら、滝は桜乃の言葉を止めた。
桜乃はきょとんとして滝を見上げていると、滝は微笑んだ。


「誕生日おめでとう、桜乃ちゃん」

「!!? た、滝さん知って…?」

「もちろん、知っていたよ。…これ、良かったら貰ってくれる?」

「!!」

「レストランに行ってから渡そうと思っていたんだけどね。…でも君が言うよりも先に、言いたかったから」


滝が桜乃に差し出したのは、綺麗に飾られてある包み…見るからにプレゼントだとわかるものだった。
桜乃は驚きすぎて、しばらく反応ができなかった。


「…俺からのプレゼントは受け取れない?」

「!? ま、まさか!その、びっくりしすぎて、だって、そんなプレゼントまで用意してくれていたなんて…思いもよらなくて、」

「君を思って選んだんだ。……受け取ってほしいな」

「…っ、はい、ありがとうございます…!」


桜乃がおずおずと滝からプレゼントを受け取ると、滝はまた優しく微笑んだ。
桜乃はドキドキと鳴っている鼓動を感じながら、時間をかけて今の状況を把握していた。
知らないと思っていたのに、滝は自分の誕生日を知っていてくれていた。
しかも、プレゼントまで用意していてくれて…。

(こんなに、こんなに幸せでいいのかな…)

桜乃は貰ったプレゼントを抱きしめながら、より一層滝を思う気持ちが強くなるのを止められなかった。

(やっぱり私、滝さんのこと、すごく好き…)

心の中にしまっておくのが、苦しいほどに。
桜乃は自分の中で溢れそうなその想いを伝えようと、再び滝を見上げる。


「滝さん!私、滝さんのことが好――」


桜乃がいざ想いを口にしようとした瞬間、その言葉を止めるように滝の指先が桜乃の唇を触れた。
思いがけない出来事に、桜乃は驚いてそれ以上言葉を続けられなくなる。


「ふふ、桜乃ちゃん。それも、俺から言わせてほしいな」


今度は少し困ったように笑いながら、滝は桜乃にそう言った。
そして、真剣な瞳で桜乃を見つめる。
桜乃も胸の鼓動が速くなるのを感じながら、滝を見つめた。


「好きだよ、桜乃ちゃん。…君が今日、俺を誘ってくれて嬉しかった。」

「……!!」

「俺の恋人に、なってくれませんか?」

「…っ」


またも思ってもみなかった状況に、桜乃は顔を真っ赤にさせてすぐに反応できなかったが…、
やがて小さく頷いて、「はい…」と答えていた…。



【すべてがハッピーサプライズ】

(もう、さっきから驚いてばかりです…)(そう?それなら大成功かな)


End

ゆうひ様からいただいたリクエストで滝桜で桜乃ちゃんお誕生日です。
滝くんは初めて書く子ですが、ちょっとキザなこともできる、スマートな男の子だと思っているのでそんな感じで書いてみました。
ゆうひさんが考えている滝桜に近ければいいのですが…!
初めて書く滝桜、楽しかったです!滝くんはレストランでも予めケーキを予約していて桜乃ちゃんを驚かせると思います(笑)
ゆうひさん、企画へのご参加ありがとうございました!


2015.1.14

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