□お昼寝日和
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日曜日の昼下がり。
今日は、現在絶賛お付き合い中の桜乃が俺の部屋に来ている。
…が。


「すー…すー…」

「……」


ちょっと飲み物を取りに部屋を離れただけってのに…。


「何ですやすや眠ってるんじゃ、この娘は…」


桜乃はベッドを背もたれにして、気持ち良さそうに眠っていた。


「無防備じゃな〜…まったく」


男の部屋で、何て可愛い寝顔さらしとんじゃ。


「…襲われたって、文句は言えないんじゃよ?」

俺は持ってきたジュースをテーブルの上に置いて、桜乃の近くにしゃがみこんだ。
眠る桜乃の頬を指先でふにふにとつつく。
あーあ、安心しきった顔して…。
手を出さないって信用されてるのか。
それとも、襲われるなんて思いつきもしないだけか。


「後者じゃな…絶対」


なんせ桜乃は今ドキでは珍しいくらいの超純情娘。
知識も経験も浅いのなんの。
男の考えてることなんて、想像もできないんじゃろうな。


「ほんっと何も知らなそうじゃからな…。」


部屋に呼んでも、警戒心のカケラも持たずに素直に来るような子じゃ。
彼氏の部屋に来るんじゃから、少しは色っぽい意味を考えるんが普通じゃないんか?


「まあ…、別にまだ、手を出そうってわけじゃないけど」


つーか、…いったいどうやってそういう雰囲気にもっていけつーんじゃ?
この超ド級の純情娘と。


「無理じゃな、無理。ぜーったい無理。」


たとえ押し倒したって、意味もわからず一点も汚れがない瞳で見つめ返してくるに決まってるんじゃ。
でも、いつか俺の自制心だって限界が来る。
ま、その時は、多少強引にでもそういう雰囲気を作ってみせるけど。

俺は立ち上がって、桜乃を起こさないようにそっと抱き上げ、後ろのベッドに寝かせた。


「さーて、俺もひと眠りしようかの」


せっかく抱き枕もあることじゃし。
俺は桜乃を寝かせた隣に横たわり、桜乃の体を抱き寄せた。


「抱き心地は抜群じゃが、…安眠は無理そうじゃな」


目の前には無防備な可愛い寝顔。
桜乃の髪からは、シャンプーの香りなのか…何か甘い香りが漂ってきて鼻をくすぐるし。
平常心を保てるはずかない状況下で安眠なんてそれこそ無理がある。


「それでも…離すつもりはないけどな」


俺は静かに目を閉じた。

今はただ、抱きしめて一緒に眠るだけ。

だけど、覚悟しとくんじゃな。
いつかは、それだけですまなくなるから。
俺は僅かに迫ってきた睡魔を迎え入れながら、腕の中のぬくもりをただ大事に抱きしめていた。




【お昼寝日和】

(起きたらどんな反応をするのか楽しみじゃ。)



end

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