キリリク

□覚悟を決めて
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『…ねえ、竜崎さん。俺のチームに入ってくれないかな』



『…えっ?』






1週間前、私はとんでもないお誘いを受けた。


19週間後に行われるテニスの大会。
お祖母ちゃんに聞いたけれど、自由にチームを組んで出場するという大会みたい。


私はその大会に思わぬチームで出場することになっている。




王者立海大の部長、幸村さんがリーダーを務めるチームで…。






「幸村さん…まだかな?」



幸村さんとは偶然ストリートテニスコートで知り合って、たまに練習を見てもらっていた。



1週間前も偶然テニスコートで会って、テニスを教えてもらっていた。





そのときに幸村さんにチームに誘われたのだけど…。





「竜崎さん、」



「あっ、幸村さん!」



「ごめんね、待たせちゃった?」



「いいえ、全然待ってません!」




今日はチーム練習の1回目。

幸村さんはまだ私以外誘ってないみたいで、今日は二人だって言ってた。




「あの…、幸村さん」



「ん?」



「その…ど、どうして私をチームに…?」



聞かずにはいられなかった。


誘われたとき、ワケが分からなくて焦っていたら


『いや?』


なんて聞かれちゃって「いやです」なんて言えるわけもなく


こうしてチームの一員になったのだけれど。



私はテニスは初心者だし弱いし…

幸村さんがどうして私を誘ってくれたのかわからなかった。





「強い相手と試合をすれば、上達する」



「え…?」



「竜崎さん、前に言ったよね?テニス強くなりたいって」



「! 言いましたけど…そんな…」



ま、まさか、私のため!?


「で、でも…私っ…」



「ねえ、俺とダブルスを組まない?」



「えええっ!?」



い、今、なんて…!?



「俺がフォローしてあげる。だから相手が誰でも、無理をせず、君は君のプレーをすればいいよ」



幸村さんは優しい笑顔でそんなことを言ってくれた。
確かに幸村さんがダブルスのパートナーだとすごく安心だけれど…




「あ、の…どうして…私なんかにそこまで…」



私、幸村さんにここまでしてもらうような才能も素質もないのに…。



「ふふ。…どうしてだと思う?」



「えっ!?」



逆に聞き返されてしまって焦る。



どうしてって…そんなの…


「わ、わかりません…」



「じゃあ、内緒」



「う…気になります〜…」


「ふふ、いつか教えてあげる。…でも、今は内緒」



にっこり笑ってそう言われたら、私はそれ以上の追及はできなかった。





「わ、私、幸村さんにきっとものすごくご迷惑かけると思います…」



「大丈夫。ちゃんとフォローするから…ね?」



「幸村さん…」



優しく頭を撫でられる。


どうしてだかわからないけど…

私なんかにここまでしてくれたのだから、


幸村さんのためにも私は少しでも、強くならなきゃ…



「幸村さん、私精一杯がんばりますねっ!」



「! 竜崎さん…」



「まだまだ全然弱いけど…、いっぱい努力しますから…!」



「…うん」



唐突に決意表明をしたら、幸村さんは最初驚いたみたいだけれど、すぐに優しい笑顔に戻った。



「俺はね、君のそういう努力家なところ、…すごく好きだよ」



「…えっ!?」



す、好きって言った!?



ううんっ!でもっ!


ふ、深い意味はないよね!
あるわけないよ…!



「わ、私は幸村さんの優しいところが…好きですっ」


「! …ふふ、ありがとう」


「い、いえ…」



深い意味はない、よ…うん!



「…手強いな」



「え?」



幸村さんが小さな声で何か呟いたけれど、私には聞こえなかった。



「なんでもないよ。…そろそろ練習しようか」



「あ、はいっ!幸村さんっ」



「うん?」



「これから、よろしくお願いします!」



「…うん、よろしくね」




頑張ろう。

私は幸村さんのチームの一員なんだから。




私はとっても信頼できるリーダーの元での初めての練習を、精一杯の力で取り組んでいた。






【覚悟を決めて】

(他は誰を誘うんですか?リョーマ君とかですか?)(うーん、彼はやめておくよ。…邪魔だし)(…?)





end

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