キリリク

□俺様の嫉妬。
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日曜日。
多忙な日々を送っている跡部さんだけど今日はお休みらしい。
だから今日は跡部さんがデートに誘ってくれた。

嬉しくて楽しみでついつい待ち合わせ場所に早く来ちゃったんだ。




「さすがに早く来すぎちゃったなあ」


今は待ち合わせの30分前。
跡部さんはまだ来ていない。

でもいいんだ。
待つのさえ楽しいから。



「あの〜、ちょっとすみません」

「はい?」


待ち合わせ場所でウキウキと待ってたら、若い男の人が話しかけてきた。



「○×マートって店、どっちに行けばいいかわかりますか?」

「ああ、えっとですね…」


男の人は道を尋ねてきた。
私が知ってる店だったから簡単に説明すると、笑顔でお礼を言って去っていった。




「桜乃!」

「あ、跡部さん」


呼び掛けられて振り向くと跡部さんが走ってこっちに向かってきていた。



「早いですね、跡部さん」

「アーン?それはお前の方だろうが…、そんなことより…桜乃」

「は、はい?」


鋭い目で見られてビクッと身をすくめる。
あ、跡部さん…何か怒ってる…?



「さっきの男は誰だ?」

「え?」

「さっきの男は誰だって聞いてんだ!仲良さそうに話してただろーが」

「え!?仲良…ええ!?」


さっきのって、道聞いてきた人のことだよね!?



「たっ、ただ道を教えてただけですよ〜!」

「アーン?お前ニコニコ笑いながら話してたじゃねーか」

「そ、それは…」


跡部さんとデートだから浮かれて顔がゆるんでただけなのに〜!!
そんなこと跡部さんには言えないけど!!


「と、とにかく!さっきの人は仲良しでもなければ名前も知らない人ですよ!」

「ナンパされてたんじゃねえのか?」

「ナ!?そんなのされるわけないじゃないですか私が!」

「……」


ムキになって反論してたら、跡部さんがため息をついた。


「お前は…もう少し自覚をもて」

「何のですか?」

「……それから」

「きゃっ」


いきなり、引き寄せられて跡部さんの腕の中に閉じ込められる。
突然のことに心臓がばっくばっくしている。



「あ、跡部さ…」

「他の男に、笑顔を振りまいてんじゃねえよ…」

「…!」

「お前の笑顔は俺だけに見せてればいい…」

「…っ」


耳許で、低い声でそんなことを囁かれて身体中が熱くなる。



「…いいな?」

「は…はい」



こんなの…、こんな状況で「いや」なんて言えるはずない。



「フン、じゃあ行くぞ」

「あ、…はいっ」


腕から解放されて、跡部さんが私の手をひいて歩く。

跡部さん…、
ばっくばっくしてた心臓がちょっとずつ落ち着いてきて私はチラ、と跡部さんを見上げた。


もしかして、…もしかすると…


「あの…跡部さん」

「何だ?」

「も、もしかして…さっきの男の人に…嫉妬した…なんてことは…」



そう言ったとき跡部さんの眉がピクッとしたから、私は慌てて否定する。


「なななないですよねっ!まさかそんな跡部さんが!すみませんっ!忘れてくださいっ!」


わ、私ってばなんて自惚れた発言を!!
ついさっきの自分を消してしまいたい!!

必死に謝ってたら、跡部さんは歩くのを止め、手を繋いで歩いてた私の足も自然に止まった。


「…おい」

「は、い……っ!」


いきなり、跡部さんが顔を近づけてきて、
軽く唇と唇が触れる。

え、えええっ!!

キ、キスされた!?

こんな公衆の面前で!?


恥ずかしくて一気に顔が熱くなる。


「…フン、俺様を嫉妬させた罰だ」

「…!」


軽く笑ってそう言うと、また私の手をひいて、何事もなかったように歩き始める跡部さん。


もう…どうしよう…。


どうして、跡部さんはいつも…こんなに嬉しいことを言ってくれるの…。



顔が、絶対に真っ赤だろうから、私はしばらく下を向いて跡部さんに手をひかれてながら歩いていた。





【俺様の嫉妬。】

(なんだか…すごく嬉しい。そう思っちゃ、いけないかな…?)



end

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