ドキサバ編
□木陰、きみとふたり
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サバイバル合宿という名目で、中学生の選手たちと一人の少女、竜崎桜乃は無人島に来ていた。
アクシデントがあり、引率の先生方とははぐれたまま、彼らはサバイバル生活をめていた。
「ふう、暑いなあ…」
この島は日本本島からずっと南に位置する島。
当然本島より気温は高い。
そんな中でずっと動き回るなんてことは、桜乃はもちろん、体力のある各学校選手たちですら辛かった。
熱中症の対策はしっかりととらなければ、危険である。
「少し木陰で休もう…」
桜乃は近くにある大きな木の下で少し休憩をとることにした。
「あれ…、竜崎さん?」
桜乃が木陰で休んでいるところに、背の高い氷帝のユニホームを着た青年が1人やって来た。
「あ、鳳さん。こんにちは〜」
「こんにちは。君も一休みかい?」
「はい…、暑くて、ちょっと…。鳳さんも一休みですか?」
「うん。こんな炎天下なんだし、休憩はしっかりととらないと危ないからね。…俺も一緒にいい?」
「もちろんです!」
「ありがとう、竜崎さん」
桜乃は快く了承し、鳳が桜乃の隣に座った。
この暑さの中、陽向と木陰ではかなりの差がある。
ずっと日に当たって火照った体には、木陰は快適な休憩場所でだった。
鳳と桜乃の二人はときどきゆったりと談笑しながら、たまに吹く心地良い風を感じながら、ゆっくりと時間を過ごしていた。
(…そろそろ練習に戻ろうかな)
しばらく涼しんで休息をとった鳳は、練習に戻ろうと隣にいる桜乃に声をかけるため横に見た。
「竜崎さん、俺そろそろ…」
――こてっ。
「…!!」
桜乃の体が鳳の方に倒れてきて、桜乃が鳳に寄りかかる大勢になる。
「えっ…と、竜崎さん…?」
鳳は激しく動揺しながらも何事かと彼女の顔を覗き込むと…
「すー…すー…」
(ね、…寝てる?)
閉じられたまぶたに規則正しい呼吸。
桜乃はすやすや眠りについていた。
(疲れてたのかな…)
慣れない生活で…、彼女は一番体力もない。
何より、彼女は自分の祖母が行方不明で精神的にも辛い部分があるはず。
(当然といえば…当然、か)
もう少しだけ、
彼女が目を覚ますまでは…
ここにいよう。
ここで自分がどいてしまうと彼女の体が地面に倒れてしまうだろう。
それだけは、絶対に避けなければならないこと。
(それに…)
鳳は練習に戻ることをやめて、動かずにただじっと座って空を眺めた。
(せっかくの、二人きりの時間なんだ…)
もう少しだけ、このままでいたい。
鳳は木陰から太陽を眩しそうに眺めながら、
肩に寄り添う桜乃のぬくもりを、とても大切に感じていた…。
【木陰、きみとふたり】
(長太郎ー、そろそろ練習に戻…ん!?)(し、宍戸さんっ、起きちゃいますから静かに…)(あ、す、すまん…)
end
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