ドキサバ編
□なんちゃってプロポーズ?
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七月の終わり、夏真っ盛り。
それを象徴するような強い日差し。
全国の強豪校から集められた中学テニス界で注目されている選手たちは、とある無人島にて合宿の真っ最中である。
ただし、船の事故で引率者たちとははぐれた状態で選手たちだけでサバイバル生活をしながらの合宿となっていた。
そこに、紛れている選手ではない一人の少女。
「んーーっ、桜乃ちゃんの作る飯は相変わらずエクスタシーやな」
「そうね、美味いばい」
「そうですか?良かったです」
左右に垂らしたお下げを揺らし笑うのは、青学の一年生である竜崎桜乃。
事情により、青学テニス部の顧問である祖母のスミレについてきたのだが、そのスミレとはぐれ、選手たちと共に生活をしていた。
今は昼食の時間。
選手たちは皆食堂に集まって、桜乃が作った昼食を食べている。
桜乃は四天宝寺中の面々に誘われ、テーブルを共にしていた。
「ほんまに美味いなぁ」
「限られた食材でよくここまでいろんなメニュー作れるわねぇ」
「せやなぁ。料理得意なんか?」
「そ、そんな…作れるのは簡単なものばかりで…私なんてまだまだ…」
「謙遜することないで。金ちゃんを見てみぃ」
白石に言われて桜乃が金太郎に目をやると、金太郎は息つく間もなくがつがつと昼食を食べていた。
そのスピードは恐るべきもので、桜乃や四天宝寺の他のメンバーが見守る中、誰よりも早く昼食を食べ終えた。
「ぷは〜〜っ!」
「金ちゃん…、そないにがっつかなくとも、誰もとったりせえへんで?」
あまりにがつがつ食べていたので部長の白石が呆れて苦笑いをしながら軽く注意する。
「せやかて、メッチャ美味かったんやもん!竜崎の飯!おおきにな、竜崎!」
「あ、う、うん」
にっこり笑って、素直にお礼を言ってくる金太郎に、桜乃は少し照れながらながらこたえた。
「ワイ、竜崎が作った飯毎日食いたいわ〜」
「え…」
―――ぶっ!!
金太郎の言葉に吹き出したのは、同じテーブルの四天宝寺の面々だけではなかった。
(今、あいつなんて言いやがった!?)
食堂全体の空気が固まる。
金太郎と桜乃以外全員はさっきの金太郎の台詞を脳内変換していた。
『ワイ、竜崎が作った飯毎日食いたいわ〜』
↓
『お前が作った飯を毎日食いたい。』
(…いやいやいや!)
金太郎がいった言葉はまさによく聞くプロポーズの台詞。
全員が心の中で否定しながらも、桜乃の反応を気にしている。
もしかしてまんざらじゃなかったりして…
「ありがとう。そんなふうに言ってくれて嬉しいよ」
「「「……」」」
にっこりと屈託のない笑顔でそう答えた桜乃に、金太郎以外の面々は一気に脱力する。
そうだ…あいつらは天然野生児と天然純情娘だった。
そういう意味に捉えるわけないか…。
外野の思っている通り、金太郎はもちろん、桜乃も金太郎の台詞がプロポーズまがいであるなんてことは微塵も思わずに、ニコニコと笑いあっていた。
外野はそんな金太郎と桜乃を見て、あの二人に限ってそんな関係になるはずがない…と安心をして昼食を続けた。
…今は誰も予想すらしていないが、
もしかしたら安心していられるのは、
今のうちだけかもしれない…。
【なんちゃってプロポーズ?】
(今度大阪に来てな!ワイがたこ焼き作ったるで!)(本当?ふふ、楽しみだなぁ)
end
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