□Puppy love
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「ワイ、桜乃のこと、だいすきやねん!大きくなったらワイのおよめさんになってくれへん?」

「うんっ、わたしも金ちゃんのことだいすき!金ちゃんのおよめさんになる!」

「ほんまに!?やったー!やくそくやで!!」

「うん、やくそく…」


小さな小指と小指を絡めて、幼い二人は約束をして笑い合った。

…あれからおよそ10年が経ち、あのとき3歳だった二人、遠山金太郎と竜崎桜乃は中学生になった。



「桜乃ー!!今終わったん?一緒に帰ろっ」

「金ちゃん。うん、帰ろっか」



大阪の四天宝寺中学に入学した二人は、金太郎が幼い頃からテニスをやっていた関係で、それぞれテニス部に入部していた。
男子テニス部と女子テニス部とで活動は違うものの、家がとなりで幼なじみの二人は、部活が終わるとほとんどいつも一緒に帰っている。

金太郎は小さい頃からテニスをやっていて、特出した身体能力を武器に中学に入ると才能を一気に開花させて1年ながらに西の強豪四天宝寺中学のレギュラーに選ばれるほどの選手である。
一方で桜乃は近くにいた金太郎に触発されて中学に入ってからテニスを始めたものの、もとより運動が得意でない桜乃は初心者の域を抜けてはいなかった。

そんな桜乃に金太郎はテニスを教えたりして、二人はずっと仲が良いままだった。

しかし、桜乃は少しだけ今の関係に思うところがあった。


(金ちゃんは昔からずっと変わらない。だけど、私は…)


成長するたびに、桜乃は自分の中にある想いが強まる気がしていた。

…特に中学に入ってからは、金太郎は特別に目立つ存在であり、平々凡々な自分とは違うという距離を感じることで、金太郎への想いをより強く自覚するようになっていった。

(私は金ちゃんが好き…。だけど、金ちゃんは私のことを好き、なのかな)


仲が良い自覚はある。好かれているのもわかってる。
…ただ金太郎の好意は、自分のそれと同じものだとは思えなかった。


「桜乃ー?どないしたん?難しい顔して」

「えっ!あ、ごめんね。ちょっと考えごとしてて…」

「ふーん?何考えていたん?」

「あ、あのね…その、私達って…」


(…どんな関係なの?)


「……」

「? なんや?」

「…えっと、何を言おうとしたのか忘れちゃった」

「なんやそれ!変な桜乃〜」


明るく笑う金太郎の笑顔にごめんね、と笑顔を返しながら、桜乃の胸はきゅっと締まった。


『ワイ、桜乃のこと、だいすきやねん!大きくなったらワイのおよめさんになってくれへん?』

『うんっ、わたしも金ちゃんのことだいすき!金ちゃんのおよめさんになる!』

3歳の頃に交わした約束。
幼い頃だからこそ、そんな約束を交わせたのだ。

あれ以来、好きだとか付き合うとかそういう話をしたことはない。

幼い頃のあの約束すら、金太郎は覚えているか分からない。

(それでも私は…)

あの日の約束を拠り所にしてしまうほど、金太郎に恋をしていた。


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