□冬空の下の恋模様・前編
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※U17合宿が舞台ですが、原作とはだいぶ異なる点があります。ご注意ください。



今年の中学テニスの夏の大会は選手たちの実力が高く、大きく注目された。その大会で活躍した選手たちの中から特に高い実力を示した選手たちが、Uー17選抜の合宿に呼ばれて、同じく選ばれた高校生たちと共に厳しい練習に明け暮れていた。

…そんな合宿に、冬休みのあいだだけマネージャーとして一般の中高生たちが合宿に加わることになった。
日本のトップクラスの選手たち、名コーチと称されるコーチ陣、最新の設備、計算され尽くした練習メニューを見れるとあって、多くの学校のテニス部員、またはテニス部マネージャーたちが応募していた。
テニスの知識を試す筆記試験、マネージャーとしての素質を見る実技試験などを経て選ばれた学生20人が合宿への参加の権利を得たのだった。


「ふぇ〜〜、集合場所のA棟ってどこなの〜〜!」


合宿所の広い敷地内を、長いみつあみを揺らしながら駆け回っている少女が1人いた。
彼女の名前は竜崎桜乃。中学に入ってからテニスを始めた初心者なのだが、国内トップクラスの選手たちが世界に羽ばたく手助けをすることができ、さらにプレーが生で見れること非常に勉強になるだろうという理由から、テニス部の監督をしている祖母にも勧められ合宿マネージャーの試験を受けて見事合格したマネージャーの1人である。

今日はマネージャーとして合宿に加わる初日だった。12月の終盤ということもあり、合宿所ではちらちらと雪が舞っていた。
桜乃はなんとか合宿所までたどり着いたものの、集合場所がどこにあるかわからず、雪が舞う中右往左往していたのだった。

(どうしよう…!もう、誰かに道を尋ねるしか…)

そう思った矢先、桜乃は帽子を被った一人の少年を見つけた。


「す、すみませーん!」

「…?」


桜乃が声をかけたのは、選手として合宿に選ばれていた越前リョーマという少年だった。
リョーマは桜乃と同じ中学一年生でありながら、中学生の中では注目度No.1のスーパールーキーと呼ばれている少年である。


「…何?」

「えっと、A棟に行きたいんですけど、どっちにあるか教えてもらえませんか?」

「A棟?…あっちの白い建物がそうだけど」


リョーマは桜乃が来た方向の真逆を指さす。


「あ、あっちなんだ…!わかりました、ありがとうございます!行ってみます…あっ!」

「…何?まだ何かあるの?」

「いえあの、違ったらこごめんなさい。もしかして、越前リョーマさん…?」


帽子で隠れていた顔を、桜乃がじっとのぞき込む。
リョーマの知名度は全国区であり、桜乃も知っている選手だった。
むしろ、テニスの勉強のために見に行った全国大会で、リョーマのその驚異的なプレーにすっかり魅せられて、一気にファンになっていたのだ。


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