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□詐欺師のSweet day
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日々練習に明け暮れている立海のテニス部は、土日ですら練習やら試合やらで部活をしていることがほとんど。
今日は久しぶりのちゃんとした休日。
俺は桜乃とぶらぶら東京の街中を歩いていた。
「この先に美味しいって評判のアイスクリーム屋があるんですよ〜。仁王さん食べます?」
「ほう、本当に美味かったら食おうかの」
「それって一回買って食べなきゃわからないですよね?」
「そうじゃな。美味くなかったら捨てる」
「うわあ、もったいない…」
「美味いものしか食いたくないからの」
「もう…相変わらず偏食家なんですから。そんなんだからガリガリなんですよー」
そんな他愛もない話をしながら二人で並んで歩く。
目的がない、行き当たりばったりのデートも結構楽しいもんじゃな、なんて思ったりもするが、結局は隣にいる人物が重要。
桜乃がいれば、どこでだって楽しめる。
「ま、とりあえず興味はあるな。行ってみるか」
「やったあ!ずっと食べてみたかったんですよ〜」
にこにこと笑う桜乃。
なんで桜乃の笑顔ってこんなに癒されるのか。
やっぱりそれだけ俺が桜乃が好きだからかの…。
「あーーーーっ!!」
人が改めて自分の想いを確認しているところを妨害するようなバカでかい声が後ろから聞こえた。
聞き覚えがあるような声に俺は後ろを振り向くと、同時に桜乃も後ろを見た。
「あ、菊丸先輩、大石先輩」
「やあ竜崎さん」
「桜乃ちゃん!!」
そこにいたのは青学の黄金ペアとか言われてる連中…菊丸と大石だった。
菊丸は桜乃に険しい表情で詰めよってる。
近づくなっての。
「なんで仁王なんかと一緒にいんの!?」
「は、はい?」
「…愚問じゃな、菊丸。…そういう関係じゃからに決まっとるじゃろ」
「なっ!!」
桜乃を引き寄せてそう言うと、菊丸はむうーっとふくれた。
いやいや。
中3の男にそんな顔されてもな。
桜乃がやったらそらもう可愛いんじゃけど。
「さーくーのちゃん!こんなペテン野郎やめときなって!」
「えっ…えと…」
「おい大石。猫の放し飼いはやめんしゃい。ちゃんとしつけとけ」
「えっ…」
「誰が猫だっ!!」
ふしゅーっと逆毛を立てて怒る猫…いや菊丸を大石がやっと抑え始めた。
「こら、英二。いい加減にしないか」
「だってぇー!仁王だよ!?俺達がこの詐欺師とエセ紳士にめちゃめちゃ苦しめられたこと忘れたワケじゃないだろ!?」
「エセ紳士とは…失礼ですね、菊丸君。私はエセ紳士ではなく紳士ですよ」
「ひっ…!や、柳生…?」
菊丸だけじゃなく大石や桜乃ですらさっきの声の持ち主をキョロキョロ探すが見つかるはずもない。
俺がニヤリと笑うと菊丸は顔を青くした。
「お、お、お前柳生ーー!?」
「さて、…どうじゃかな」
「〜〜〜っっ!!」
菊丸が混乱してる間に俺は桜乃の手をひいて再び歩き出す。
「に、仁王さん…いいんでしょうか?菊丸先輩…」
「後は大石がなんとかするじゃろ」
「こ、こらー!話はまだ終わってないぞー!」
「英二!俺達もそろそろ行くぞ」
後ろからはブーブー言ってる菊丸とそれを宥める大石の声が聞こえていたが、俺は気にかけずにずんずん桜乃の手をひいて歩いていた。
「……」
「…なんじゃ?」
桜乃が歩きながらじー…っと俺を見てくるから、何だと思って立ち止まって桜乃に問う。
「い、いえ…その…あの」
「…?」
「ほ、本当に…仁王さん…ですよね?」
「……は?」
何を言い出すかこの娘は…とか思いながら怪訝な顔で桜乃を見る。
「だって!や、柳生さん…?…ううん、まさか…」
「……」
「どう見ても仁王さん…です…よね…」
「……」
さっきの柳生の声真似のせいか…。
桜乃は俺の顔をじろじろと観察している。
俺は小さくため息をついて桜乃の手をひいて建物の影に連れていく。
「俺が仁王じゃって…、証明しちゃる」
「え…」
壁に桜乃を追い詰めてそのまま…
「…んっ!?」
淡いピンクの小さな唇に深く深く口付ける。
何度も唇の角度を変えながら、しばらくの間桜乃を解放しなかった。
「…ぷはっ…はあ…」
「いくら柳生でも…俺のキスのテクは真似できんぜよ」
「!!」
つーか、桜乃とのデートに柳生を行かせるわけないじゃろうが。
そんなもったいないこと、するはずがない。
「ま、間違いなく仁王さん…です」
「じゃろ?」
「紳士な柳生さんは、こんな街中で…キ、キスなんかしませんもん!」
「…ほーう?」
つまり俺は紳士じゃないと?
そういうこと言っちゃうかこの娘は。
よーっぽど俺にいじめられたいと見た。
ニヤリと笑って桜乃を見ると、桜乃はビクッとして早々とこの建物の影から出ていこうとするがそれを俺が許すはずもなかった。
「…逃がさんよ?」
それから俺は、アイスの前にもっと甘いものを楽しんでいた。
【詐欺師のSweet day】
(もう甘いものは充分かもしれんのう)(えぇ!?アイス屋は!?)
end
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