□太陽は微笑んで
1ページ/2ページ



「うーん…よく降るねえ」

「そうですね」


ザーっと聞こえる激しい音。
窓から覗けば、昼間だっていうのに外は暗い。
すべての原因は、どしゃ降りの雨。


「これじゃどこにも行けないC〜…」

「外に出るのは無理そうですね」


窓の外を睨みながらふくれる俺。
桜乃ちゃんは横で困ったように微笑んでた。


「せっかく桜乃ちゃんとデートだったのに…」

「ジローさん…」


今日は桜乃ちゃんとデートの約束をしていた。
ほんとは外に遊びに行くつもりだったんだけど朝から強い雨が降っていたから急遽俺んちに来たんだ。
俺の部屋で雨が止むのを待ってるのに、止むどころか強くなる一方。



「あの、ジローさん」

「うん?なに〜?」

「私、その…」


ぎゅ…と俺の服の裾を握られたから、何だろう、と窓の外から桜乃ちゃんに視線を移す。



「私はジローさんと一緒ならどこででも幸せなんです」

「…!」


桜乃ちゃんはにっこりと、柔らかく笑ってそう言った。
ドキン、と俺の胸が鳴る。



「だから…えっと、…す、すみません、何が言いたかったのか私…」

「桜乃ちゃんっ」

「きゃっ?」


ぱっと服の裾を離した桜乃ちゃんに俺はぎゅっと抱きついた。


だって、俺も気づいちゃったから。


場所なんて関係なかった。



「…俺も桜乃ちゃんが一緒なら、どこでもいいや〜」

「ジローさん…」



外に出掛けても、部屋の中にいても。

君が一緒なら、どこでたって楽しいし…幸せなんだ。


こんな雨の日だって、笑顔で側にいてくれてる、

優しい君が一緒なら。





「…ふぁ…」

「…眠いんですか?」


桜乃ちゃんを抱きしめてたら、暖かくてつい眠くなっちゃった。
ごしごし目をこする俺を桜乃ちゃんが覗き込んでくる。


「眠ってもいいですよ?」

「…だって眠ったら、君がつまらないでしょ〜?」

「大丈夫ですよ」

「う〜…じゃあ、桜乃ちゃんも一緒にお昼寝しよ〜?」

「えっ?」



俺はごろんとその場に横たわって、促すように桜乃ちゃんの腕を軽くひく。


「ほら、桜乃ちゃんも横になって」

「あ、は、はい」



ごろんとふたり向かい合って横たわる。
俺はぎゅっと桜乃ちゃんの手を握った。



「それじゃ…おやすみ。桜乃ちゃん」

「…はい、おやすみなさい」


目を瞑る前、桜乃ちゃんの眩しい笑顔が目に映った。


暖かくて眩しくて…、優しい。



雨の日に輝いたのは、

太陽みたいな君の笑顔。




【太陽は微笑んで】

(夢の中でも、どうか俺を照らしていて)




end
あとがき→
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ