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□気になるあの子
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「ああーん、バンダナ君たらメッチャ可愛いわぁ〜」
「浮気か!死なすど」
「…先輩ら、キモいっすわ」
…いつまにも増して、よくやるわ。ほんま。
小春先輩が見てんのは、青学の二年、海堂。
きっつい目付きで青学の1、2年に指示を出してる。
そんな海堂をうっとり眺めている小春先輩に、一氏先輩はご立腹みたいや。
いい加減、このしょーもない痴話喧嘩には付き合いきれん。
俺は2人のそばを離れて、ぷらぷらその辺を歩いていた。
そもそも、何で青学のやつらと一緒にいるのかと言うと。
今日からウチら四天宝寺は、東京の青学に招かれて合同合宿を始めたわけで。
そんで今は、その1日目の練習が終わったとこ。
両校の主に1年が片付けに励んでいる。
…ん?
あれは…。
「よいしょ、よいしょ」
「……」
金ちゃんくらいのちんまりとした背の、長いおさげの女の子が、ボールが入ったでかいかごを、よたよた運んでいる。
あの子は、…確か…。
「…なあ、君」
「え?…私、ですか?」
「そ、君や。…竜崎さんやったっけ?」
俺はその子に話しかける。
確か、青学の顧問、竜崎先生の孫娘のはず。
合宿の手伝いに来たって言うてたっけ。
「あ、はい。竜崎桜乃です。…えっと…、四天宝寺のレギュラーの…財前さん?」
「ああ。財前光や。よろしゅー」
「はい。よろしくです」
「…あ、おい!」
俺は慌てて彼女が持つボールのかごを押さえる。
…間一髪やな。
「かごを持ったままお辞儀なんかしたら、ボールぶち撒けるで…」
「あ、す、すみませんっ!」
挨拶と一緒に彼女がボールのかごごとお辞儀して、ぶち撒けそうになったのを、俺が押さえたからなんとか被害はなかった。
「…自分、ドジっ子なんか?」
「え!そ、そんなことないですっ、今のはたまたま…」
「そーか?さっきやて今にもコケそうな足取りやったで」
「え?」
俺は押さえたままやったかごを、そのまま竜崎さんから奪い取る。
「あ、あの、財前さん?」
取り上げたかごは、俺にとってはさほど重いわけやない。
せやけど…。
「これ、君にはちょっと大変やろ。」
「えっ?だ、大丈夫ですよ?」
「あかんやろ。コケて怪我してからや遅いんやって。これは俺が片付けとくわ」
「あっ…」
驚いた顔の竜崎さんをよそに、俺はさっさと歩き出してその場から去った。
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