□俺だけの花
1ページ/1ページ



晴れた日曜日。
今日は桜乃ちゃんと桜を見ようって約束して、東京の公園で待ち合わせをした。

満開の桜が続く道を歩きながら、彼女の姿を探す。



「…あ、」



見つけた。

一際大きな桜の木の下。
彼女は咲き誇る桜を見上げていた。

声を、かけようと思ったそのとき。

暖かな南風がふいて、桜の花びらが彼女を包むように舞った。




――…。




一瞬、言葉を失った。





桜の中に立つ君は、


周りのどんな桜よりも……。





「…幸村さん?」




彼女が俺に気づいて、声をかけられる。




「…ごめんね?待たせて」

「いえ、全然待ってないですよ」




桜乃ちゃんはふわりと笑う。

俺も彼女に笑顔を返した。



「桜乃ちゃん。髪に桜の花びらがついてるよ」

「えっ!ほんとですか!?」



あわてて髪を確認しようとする彼女の手を止めて、俺が彼女の髪に触れる。



「俺が、とってあげるから」

「あっ…す、すみません」



髪の桜をとりながら、俺は彼女の顔に顔を寄せた。



「?…幸村さ」



―――ちゅっ



桜色の小さな唇に、短いキスを落とした。

少し離れて彼女を見つめる。
最初はぽかんとしていけど俺と目が合うと、桜乃ちゃんはみるみるうちに顔をくした。



「な、な、幸村さんっ!?」

「ふふ。君が…可愛いかったから、つい、ね」

「つ、ついって…!!」




いきなりすぎです!と彼女は真っ赤な顔で俺に抗議する。

ごめんね、と笑えば彼女は更に顔を赤くして、困った顔になった。


可愛いくて、綺麗で。

どんな桜より、魅力的な君。




「桜乃ちゃん」

「は、はい?」

「大好きだよ」

「っ!!」




君は俺だけの小さな『桜』。


どうか、俺の隣でずっと咲かせていて?


俺を一番夢中にできる花は、

君だけなのだから。




【俺だけの花】

(満開の桜よりも、俺の心を奪って離さない)




end

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ