□全愛を捧げます
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4月19日。
時間は夜の11時58分。
部屋で掛け布団の上からベッドに横たわってぼんやり天井を眺めている。

もうすぐ俺も16歳か、なんて。

ま、16歳になろうが俺はなんも変わんないけど。

とにかくあと1分ちょいで俺の誕生日がくるだってこと。


俺は横に置いてある携帯をちらりと眺める。

こだわるやつは0時ぴったりにメールを送るからな。
誰が一番に来るかな〜なんて考えてみたり。

やっぱり最初に浮かんだのは、愛しの彼女…桜乃のこと。

まあでも…桜乃は早寝だからな。
絶対くれるだろうけど明日の朝ってとこかな。
それでももちろん嬉しいから全然いいんだけどさ。

なんて思っていたら、携帯が鳴り出す。

…まだ59分だし、フライングか?とか思いながらよく聞くと、それはただ1人に設定した着信音…しかも電話だと気づいて、俺はすぐに携帯をとって通話ボタンを押した。



「もしもしっ?」

『…あ、ブン太さん。ごめんなさい…遅くに』

「いや、平気。全然平気。普通に起きてたし。」


電話の相手は、桜乃。
俺はまさかの出来事に若干テンパって自分の誕生日のことなんかどっかふっとんでいた。



「で、どうしたんだ?こんな時間に」

『それは…、あ。あとちょっとです!』

「へ?」


何が?と聞こうとしたうちに、その瞬間が来たようで、桜乃は明るい声で俺に言ったんだ。


『お誕生日、おめでとうございます!』

「…っ、あ」


時間は0時ぴったり、日付は4月20日…まさに俺の誕生日になった瞬間。

驚きとか感動とか色んな感情が一気に来て、上手く反応できないでいると、桜乃は更に言葉をつなげた。



『どうしても一番に、言いたかったんです。ブン太さんに、おめでとうって』

「…〜〜っ」



何だそれ…

可愛い…!

可愛すぎるっ…!!


落ち着け!と頭が命令しても、心はもう桜乃が大好きだという気持ちでいっぱいで、ドクドクと普段より速く心臓が鳴る。



「あ…ありがとな!超嬉しい!めちゃくちゃ嬉しい!」

『い、いえ…夜遅くに電話なんてご迷惑かなって思ったんですけど』

「桜乃、俺のために今の時間まで起きてたのか?」

『そ、それは……はい』



〜〜ああもう!!

嬉しい…マジで嬉しい。

俺ってかなり幸せ者だな…。



「サンキュ…好きだぜ!桜乃」

『ブ、ブン太さ』

「超好き…大好きだ!」

『あぅ…、わ、私も……です…』

「…うん?何?もっかい言って」

『〜〜〜っ、私も…だ、大好きですっ…ブン太さんのこと』

「ん、わかってる」

『うぅ…もう』


照れて真っ赤になっている桜乃の顔を想像してつい笑ってしまう。
何で笑うんですか!?って桜乃が怒るから、桜乃が可愛いからって素直に言ってやったら桜乃はまた、う…と言葉を詰まらせた。


『も、もう…ブン太さんてば、すぐにそんな恥ずかしいこ言うんですから…』

「恥ずかしくないぜ?本当のことだろぃ」

『っ…ま、またそんなこと言って…もう』



あーあ、隣にいたら抱きしめてんのに。
世界一可愛い、俺の恋人。



「次の日曜日はちゃんと空けてあるんだよな?」

『あ…はい、空けておいてあります。プレゼントもそのとき渡しますね』

「ああ、サンキュー!楽しみにしてる、…あとさ」

『はい、何ですか?』

「日曜日はいっぱいイチャイチャしような!」

『えっ、い、イチャイチャ!?…って、』

「ぎゅ〜〜って抱きしめて、たくさんキスする」

『〜〜っ!!!?』

「約束だぜ?」



もとから約束していた日曜日に、更に甘い約束をとりつける。

ほんとは今すぐに抱きしめたりキスしたりしたいけど、日曜日まで我慢。

だから我慢した分、日曜日は手加減しない。



「楽しみだな?日曜日」

『ブ、ブン太さん〜〜っ!』



可愛い俺の恋人。

君がくれたおめでとうのお返しに

溢れんばかりの俺の愛、

全部受け取ってくれよな?




【全愛を捧げます】

(桜乃だって楽しみだろ?)(そ、それは、その、う〜っ)




end

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