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□I'm a lucky boy!
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俺の名前は千石清純。
生まれながらのラッキーボーイ。
そんでもって女の子大好き。
女の子って皆可愛いよね。
俺はすべての女の子の味方だよ!
…なんて、思ったりしてたんだけど。
ラッキーなのか。
アンラッキーなのか。
俺は、君と出会ってしまった。
あの日から、俺は─…。
数日前、なんとなく立ち寄ったとある都内の本屋。
教本のコーナーで、背伸びをして手を伸ばしている女の子が1人。
腰まである長いおさげに、…他校の制服…この制服は青学だな。
俺は後ろからその子がとろうとしているであろう本をとった。
「あっ…」
「この本?」
「あ、そ、そうです」
「じゃあ、はい」
「あ、ありがとうこざいますっ」
「いえいえ」
可愛い女の子のお役に立てるならこのくらい〜、なんて続けようとしたら、彼女に渡した本がテニスの教本であることに気付く。
「あれ?君、テニスするの?」
「あ、はい…まだ初心者なんですけど……あっ」
「ん?」
「せ、千石さん…」
「あれ?俺の名前知ってるんだ?もしかしてどこかで会った…?」
「い、いえ…その、一方的に知ってるだけで、千石さん有名ですから…」
「そっか〜。うんでも、君みたいな可愛い子は一度会ったら忘れないからね」
そう言うと、その子はさっと顔を赤く染める。
純粋な子なんだな。
うんうん、可愛い可愛い。
「…あ」
「ん?」
「せ、千石さん、手から血が出てますっ」
「え?」
確認すると確かにちょっと切れてた。
いつの間に切ったんだろ。
気づかなかったな。
うーん、アンラッキー。
なんて考えていると、白くて可愛い手が俺の手に触れた。
「!」
「手…見せてくれますか…?」
「う、うん」
ドキンと胸が鳴る。
彼女はポーチから絆創膏を取り出して、俺の手の傷に貼ってくれた。
「あ、ありがとう」
まだちょっとドキドキしながらそうお礼を言うと、彼女はどういたしまして、と微笑えんだ。
その笑顔は、とてもとても綺麗で…。
今までにないくらい、胸が高鳴る。
「あ…では、私はこれで…」
「あ、ちょ、ちょっと待って!」
去ろうとする彼女を俺は慌てて引き止めた。
「あのさ、もし良かったら─…」
あの日彼女に出会わなければ、知らなかった感情。
ラッキーなのか。
アンラッキーなのか。
君を想うと、胸があたたかかくなって、だけど少し苦しい。
君以外の、他のどの女の子を見ても、前みたいに思えなくて。
どうしたって、君と比べて。
どんな可愛い子も、どんな綺麗な子も、君が見せたあの笑顔に勝つ子はいなくて。
『…良かったら、俺がテニスを教えようか?』
あのとき、咄嗟に出た言葉。
名前すら知らなかったのに。
「千石さんっ」
「あ、桜乃ちゃん」
「す、すみません…お待たせしちゃいましたか?」
「大丈夫だよ〜、今来たところだから」
ねえ、君に会えることがすごく嬉しい。
もっと、君のことが知りたい。
「あの…本当にいいんですか?千石さんほどの人が、私なんかにテニスを教えてくれるなんて」
「もちろん!むしろ君みたいに可愛い子とテニスできるなんてラッキーだよ」
…あぁ、うん。
やっぱり、そうだ。
だって、君といるだけで、心がこんなにはずんでる。
こんな気持ち、初めてだよ。
アンラッキー…なんかじゃない。
俺の名前は千石清純。
生まれながらのラッキーボーイ。
これまでいろんなラッキーに巡りあってきた。
でもねきっと、
今までで一番のラッキーは
あの日、君に会えたこと。
【I'm a lucky boy!】
(もう、君を知る前の俺には戻れない)
end
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