□SPECIAL DAY!
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進学したり進級したり、学生にとっては慌ただしい月である4月。
そんな忙しい4月の、下旬に入ったという本日4月20日。
今日は、桜乃との約束がある。


「悪い桜乃っ、待たせた?」

「ブン太さん!大丈夫ですよ」


桜乃とは、近くの公園で待ち合わせをしていた。
部活がちょっと長引いたので急いで待ち合わせ場所に行けば、案の定すでにそこで桜乃が待っていた。


「ブン太さんすごい汗…そんなに急がなくても帰ったりしませんよ?」

「桜乃を待たせるのは嫌だったんだよぃ」

「ブン太さんならいくらでも待つのに」



桜乃がハンカチを取り出して汗を拭いてくれる。
さらっと可愛いこと言いながら、そういう女の子らしいことを自然にするからときめくんだよなあ。
まったく。
そう思いながらじいっと桜乃を見ていたら、桜乃は汗を拭いてくれていた手を止めて不思議そうな顔をした。


「私の顔に何かついてますか?」

「いや?ただ可愛いなって思って見てただけ」

「!!」


言うと桜乃は真っ赤に顔を染める。
桜乃に向けては何度も言ってる言葉だけど、常に初々しい反応を見せてくれる。
だからそういうところが可愛いんだって。


「ブン太さんは、口が上手いです…」

「なーに言ってるんだよぃ。俺は素直なだけ」


思ったことを言ってるんだよ、と言ってやれば、桜乃は赤いままで困ったような顔になった。


「わ、私のこと可愛いなんて思うの…ブン太さんだけですよ」

「…むしろそうだったらいいんだけど」


そんなはずがないから、気が抜けないんだっての。
ほんと鈍感なんだから。
はーってため息をつくと、桜乃はキョトンとした顔で聞いてくる。


「? どうかしましたか?ブン太さん」

「ん、いや、なんでもない。」


ポンポンと桜乃の頭を撫でたら、そうですか、とにっこり笑った。
うん、笑顔はやっぱ最高。
桜乃の笑顔に俺もつられて笑顔になる。

学校とか部活とかで疲れてたはずなのに、桜乃と一緒にいるだけで疲れなんてふっとぶ。
桜乃と過ごす時間が好きだ。
…なんか忘れてる気がするけど。


「あの、ブン太さん!」

「んー?」

「お誕生日、おめでとうございますっ」

「あ、そうだった。」


そっかそっか。
今日誕生日だ、俺の。


「そうだった、じゃないですよ!自分の誕生日でしょう!もう…今日は特別なんですよ」

「特別、ねえ…」


確かに今日会おうっていう約束は、俺の誕生日だから…っつー理由だけど。


「俺は…」

「はい?」



桜乃が祝ってくれる誕生日は、特別。
…それでも、俺は。



「桜乃に会えることだけで特別だから」


誕生日だってことを忘れるくらい、桜乃に会えることが楽しみだったんだ。
会えればそれだけで、嬉しいんだ。

素直に気持ちを伝えると、ふたたび桜乃は顔を赤くした。

それがやっぱり可愛くて、ぎゅっと強く抱き締めた。



【SPECIAL DAY!】

(誕生日でも普段の日でも、君に会えたら全部特別な日)




end

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