□プールには危険がいっぱい?
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「わあ…広いですね!」

「そうだね」


夏休み、暑い日が続く中、恋人同士である桜乃と幸村は2人で室内プールに来ていた。


「桜乃ちゃん、水着…可愛いね」

「えっ、そ、そうですか…?」

「うん、すごく。」

(閉じ込めちゃいたいくらいに…ね)


幸村から水着を褒められ、桜乃は照れて顔を赤くして下を向いてしまった。
幸村が、フフ…と笑顔を浮かべながら恐いことを考えているなんてことは、桜乃にはわからない。


「それじゃあ…プールに入ろうか」

「はいっ!」

「足、滑らないようにね」

「あ…はい」


プールに入った幸村は手を差し出して桜乃の手をとり、桜乃は幸村に支えられながらプールに入った。


「わ、冷たい…けど、気持ちいいです!」

「ふふ、そうだね」


2人は笑いながら、2人の時間を楽しんでいた。


・・・・・・


流れるプールを桜乃と幸村は水の流れに身を任せてゆったり泳いでいた。
さすがに夏のプールは混んでいて、流れるプールも人で溢れていた。


(見失わないわように注意しないと…)


幸村は桜乃とはぐれないよう注意をしていたのだが。



「…桜乃ちゃん?」


少し目を離した隙に、横にいると思っていた桜乃いなくなっていた。
後ろを見ても、前を見ても、桜乃の姿は見当たらなかった。

幸村はしまった、と思ったがぼやぼやしている暇はない。

(早く探さないと…!)


プールサイドから桜乃を探そうと思った幸村は、プールから上がった。

あんな可愛い格好をした桜乃だ。
変な連中を寄せ付けていなければいいが…。


そんな幸村の嫌な予感は見事的中することになる。




「あ、あの、離してくださいっ」

「いいじゃん。俺らと遊ぼ〜」

「そうそう。楽しいよ〜」



プールサイドをプールに沿って桜乃を探していた幸村が見つけたものは、桜乃が三人の男に絡まれている光景だった。

桜乃は1人の男に肩を抱かれていて、逃げるに逃げられない状態であった。

勿論幸村はすぐに桜乃たちに近づいて、桜乃の腕をひいて男たちから引き離した。



「! 幸村さんっ」

「なんだお前…」

「悪いけど…この子俺の連れなんだ。返して貰うよ」

「あぁ?なんだと?」

「女みたいな顔していきがってんじゃねーぞ………っ!!?」


ナンパを邪魔されてイラついた男たちが幸村に凄んだが、急に彼らに背筋が凍るような悪寒が走った。



「…この子は俺のだから。丁重にお引き取り願うよ。(…汚い手で彼女の素肌に触って…どうなるかわかってるんだろうね…?)」


「「「…………っっ!!」」」



口許には笑みを浮かべているが、瞳は明らかに笑ってはいない幸村。
その空気が凍るような冷たい視線に言葉が出ずに固まる男たち。

あげく、何か聞こえてはいけない言葉まで聞こえた気がして、男たちは、ひぃぃ!と情けない声を上げながら逃げ去っていった。


そんな幸村から滲み出ていたどす黒いオーラにまったく気づかない鈍感ぽやぽや娘・桜乃は逃げ去っていった男たちに「?」を浮かべながらも幸村に向かってお礼を言った。


「幸村さん、助けてくれてありがとうございました!」

「彼氏なんだから、助けるに決まっているでしょ。それより桜乃ちゃん、」

「はぁい?」

「ちょっとおいで」



幸村は桜乃の手を引き、プールサイドの端の方に歩いていく。

ウォータースライダーの下、人目につかない壁際に連れてこられた桜乃。


「? 幸村さん?こんなところで何を…」



───ちゅっ



「っ!?」


幸村は桜乃の肩に口付けていた。
しかも一度でなく、ちゅ、ちゅ、と何度も…。


「ゆ、幸村さんっ!?何して…っ」

「何って…消毒だよ」

「しょ…消毒…?」

「触らていたでしょ、さっき…」

「あ…っ」


確かに先ほどのナンパ男に桜乃は肩を抱かれていた。
だがそれで消毒と称されて、肩とはいえど素肌に直接何度も幸村の唇が触れることは桜乃にとって未知の感覚であり、どうしたらいいかわからずにされるがままになっていた。


「…こんなに白くて綺麗な素肌に、汚い手で触るなんて…許せないな」

「ゆ、…幸村さ…っ」

「桜乃ちゃん…君に触れていいのは、俺だけだよ…?」

「あっ…」

「…ね?」


幸村に見つめられて、真っ赤な顔でコクコクと必死に頷く桜乃。

それを見た幸村は満足そうに笑って、最後に桜乃の唇に口付けを落とした。




【プールには危険がいっぱい?】

(誰にも触れさせない。俺だけの君だから)



end
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