短編
□5th Anniversary
1ページ/4ページ
「それでさ〜、彼氏がさ…」
「えー、ほんとに?やばいね〜」
青春学園高等部、3年1組の教室で桜乃は何人かの女友達とグループになってお弁当を食べていた。
お年頃の女子のあいだで一番盛り上がるのは恋愛トーク。
今日もまた、自分の話、友達の話などさまざまな恋バナを繰り広げていた。
桜乃はその中でよく喋るほうではなく、聞き手になっていることが多い。
「そういえば、知ってる?3組の麗子ちゃん、このあいだ彼氏と別れちゃったんだって」
「そうなの〜!?長かったよねえ、麗子ちゃん」
「麗子ちゃん」の話題になったとき、桜乃はドキッと胸を鳴らす。
話題のなかの「麗子ちゃん」には、約5年付き合っていた青学ではない大学に通う2歳年上の彼氏がいた。
そして、桜乃にも…。
神奈川の立海大に通う、2歳年上の丸井ブン太という恋人がいた。二人はもうすぐ付き合って5年目を迎えて、「麗子ちゃん」のカップルとよく似た状況だった。
「で、麗子ちゃんは何が原因で別れたの?」
「それはねえ…彼氏の浮気だって」
「ええ!?浮気!!?」
「そう。ほら、麗子ちゃんって外部受験するから勉強大変でしょ?なかなか会える時間なかったみたい。それで彼氏は大学でサークルとか飲み会とか遊んでばっかり。浮気も一回じゃなかったみたいよ」
「へえ〜…5年も付き合ってるのにそうなっちゃうんだね」
「5年付き合ったからじゃない?5年の記念日に塾だったからデートできなかったらしいけど、帰りに偶然彼氏と浮気相手に遭遇したんだって!」
「え〜!!修羅場!!」
「でもそれ見てショックというよりはっきり冷めた感じだったんだって。その場で別れ話になってあっさり別れたらしいよ〜」
友人たちが女子トークに花を咲かせる中、桜乃はどんどん顔色が悪くなっていく。
それに気付いた一人の友達が、桜乃の様子に気付いてあっ!と声を出す。
「さ、桜乃!桜乃と麗子ちゃんたちは違うわよ」
「あっ!桜乃ももうすぐ5年だっけ…」
「ど、どのカップルもそうなるわけじゃないしっ!」
桜乃と麗子の共通点を思い出した友達たちが必死にフォローを入れ始めた。
桜乃はその優しさに感謝し、ありがとうと言いながらも、不安が胸を占めるのを止められなかった…。
.