短編
□この恋はフリーダム!
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※「愛の逃避行?」の続編です。
遠距離恋愛中の恋人、竜崎桜乃と久しぶりに会ったのは俺の誕生日。
桜乃のおめでとうの言葉と、誕生日プレゼント。嬉しいとか幸せとか、最高の気持ちなまま桜乃にキスをしようとしたところ、見つけたくない人達を見つけてしまった。
桜乃があの人らに気付いてしまうと、正直キスなんてできたもんじゃない。
それどころか、「皆さんも一緒に…」なんて言い出しかねない。
久しぶりのデート、しかも俺の誕生日なんやから、二人きりで過ごしたい。
そう思ったから俺は竜崎の手を引いてあの人らを撒くため走った。
「はぁ、はぁ」
「すまんな…桜乃」
広い公園の中に逃げ込んでしばらくしてから立ち止まった。
桜乃は少し息を切らしている。
「いえ…大丈夫です。でもどうしたんですか?突然…」
「あ、あぁ…えっと」
しまった、言い訳を考えてなかった…。
俺は必死に桜乃が納得しそうな理由を考える。
「…猫が」
「え?」
「めっっちゃ可愛い猫がおったんや。でも逃げるから、つい…」
…って、何言ってんや俺は!!
どんな言い訳やねん!!!もっとあったやろ!!!
さすがに桜乃かて怪しむんやないか…?
と、思ったんやけど。
「えーーっ!?そうなんですか!?それでその可愛い猫ちゃんはどこに…」
「え、ああ、さっき見失って…」
「そうでしたか…残念です」
桜乃のシュンとしてしまった姿を見ると、嘘をついてしまったことに心が痛む。
ごめんな桜乃…。ほんまは猫ちゃんとか可愛らしいもんじゃない。とんだお邪魔虫を撒くためなんやって…。
……と、ふと桜乃のずっと後ろのほうに、再び例のお邪魔虫たちの姿を見つけてしまう。
「居ったで!」
「おお、さすが謙也!」
やっぱり追い付かれたか。
居ったで!やないわ、あの人ら…。
「くっそスピードスターめ…」
「? どうしました?財前さん」
「あ、いや、何でもない」
慌てて桜乃を誤魔化しながら、俺はヤツらの様子を窺う。
…逃げても見つかるんなら、気にしても意味ないか。
桜乃にバレるのも時間の問題なら、その前に。
「なぁ、桜乃」
「はい?」
「さっきの続き、せえへん?」
「続き…?」
そっと顔を近付けて至近距離で桜乃を見つめると、桜乃はびっくりしたのか顔を赤く染めた。
……向こうの方から何やら声が聞こえるけど、今度は気にしない。
驚いている桜乃の唇に、自分の唇をちゅっと重ねる。
「ざ、財前さ…!」
「おお…!」
「ちゅーした!ちゅー!」
「ほんまにしよったな!」
「えっ…!? み、皆さん!?」
一際声が賑やかになったせいで、ついに桜乃にもあの人らの存在がバレてしまった。
先輩らもしまった、という顔をしている。
なんや、ほんまにこっそり見てるつもりやったんか。
桜乃は急にキスされたこととか、キスが見られたのとかいろいろ恥ずかしいのか真っ赤にして慌てている。
…俺はそんな桜乃の手をぐいっと引いて歩き出した。
「財前さん…っ!?」
「…桜乃、今日が何の日か覚えてるか?」
あの人らはまた付いてくるんだろうか。
…まぁ、もう誰に見られてようが、桜乃が恥ずかしがろうが、お構い無しやけど。
「今日は、財前さんのお誕生日です」
「そう」
今日は、俺の誕生日。俺のしたいようにしてもバチ当たらんやろ?
わざわざ東京から会いに来てくれた桜乃と、俺はもっといちゃいちゃしたい。
「せやから、俺の好きにさせてもらうで。覚悟せえよ」
そう言ってニッと笑うと、桜乃はまた顔を赤くした。
【この恋はフリーダム!】
(あっ、皆さんにちゃんと挨拶しないと!)(いや、それはええから…)
end
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