短編

□お前はお前のままでいい
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「うーん、どうしよう…。」


今日は新しい服を買いに来ている。
色とりどりの服を眺めながらあの人のことを考える。


「なるべく大人っぽくて上品なのにしなきゃ。
だけどあんまり高いものは買えないし…。」



あの人…、跡部さんの隣にいても恥ずかしくないように。

跡部さんと私は、数週間前からお付き合いを始めた。
氷帝学園の生徒会長を務めながら、部員が200名もいるテニス部の部長もこなす跡部さん。
気高くて強くてかっこよくて…、私なんかが隣に並ぶなんて本当はあり得ないくらいの人。
だから、せめて見た目だけでも…。


「跡部さんに……、合った服、選ばなくちゃだけど…。」

「俺様が何だって?」

「きゃあ!?」


いきなり声をかけられて、思わず叫んでしまった。


「あ、ああ跡部さん!?何でここに…」

「アーン?外からお前の姿が見えたから店に入った。」

「そ…ですか。」

「それで?俺様が何だってんだ?」

「あの、その…」


少しでも跡部さんに合った格好したくて…なんて。
言えないよ…!!


「なな何でもないですっ」

「アーン?てめぇ、俺様に隠し事する気か?いい度胸じゃねえか。」

「えええっ!?隠し事とかそんなんじゃっ……!」


跡部さんはにやりと笑ってじりじり近づいて来る。
思わず後退りしたら、腕をひかれて跡部さんの腕の中に閉じ込められた。


「ひゃっ!?」

「…俺様に合った格好がしたいなら、いくらだって服を仕立ててやるよ。」

「…!?ああ跡部さん、聞いて…!?」

「けどな、桜乃…」


跡部さんは、私の耳に唇を寄せてそっと囁いた。


【お前はお前のままでいい】

(嬉しさと恥ずかしさでむねがいっぱいになった!)



end

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