短編

□抱き心地、良好
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「こんにちは、菊丸先輩」

「いらっしゃい!桜乃ちゃん」

日曜日で、部活も休みで。
だから今日は絶賛お付き合い中の彼女である桜乃ちゃんと、俺んちで遊ぶ約束をしてたんだ。



「どうぞ、上がって〜」

「お邪魔します」


俺は桜乃ちゃんを自分の部屋に招き入れた。
付き合って三ヶ月だけど、部屋に呼ぶのは初めてで。
だからちょっと緊張してる。


「わあ、ここが菊丸先輩の部屋…」

「そうだよん。ジュースもってくるから、くつろいでて」


そう言い残して、俺は階段を下りて台所に向かう。
すぐにジュースとお菓子を用意して、俺は自分の部屋に戻った。



「桜乃ちゃん、おっまたせ〜」

「菊丸先輩!抱きしめてもいいですか!?」

「へっ!?」


部屋を開けると、いきなり桜乃ちゃんが目を輝かせて爆弾発言をしてきた。


「え、えっと、桜乃ちゃん?」

「あのっ、おっきなクマのぬいぐるみを…」



抱きしめちゃだめですか?と、目を輝かせたままで、クマのダイゴロウを指でさす。


「ああ、ダイゴロウね…。」

「クマさん、ダイゴロウっていうんですか?」

「そうだよ〜」


まあ、桜乃ちゃんがいきなり抱き締めたいとか言うわけないもんね。
ちょっと残念と思いながら俺はダイゴロウを持ち上げて、はい、と彼女に手渡した。


「わあ!ありがとうございます!!」


桜乃ちゃんは俺からダイゴロウを受け取って、ぎゅ〜っと抱きしめる。

か、可愛い…!


「えへへ、ふかふかで、気持ちいいです」


ダイゴロウを抱きしめて頬擦りをする桜乃ちゃん。
すっごく可愛い…んだけど…。

〜〜ずるい!羨ましい!そこ代われダイゴロウ!!

ぬいぐるみにヤキモチなんて、バカみたいだけど。
それでも、羨ましいんだから仕方ない。
むう、としながら桜乃ちゃんとダイゴロウを見つめる。


「菊丸先輩?どうしたんですか?」


桜乃ちゃんがダイゴロウを抱きしめながら、上目遣いで俺を覗き込んできた。

だからっ!!
可愛すぎるって…!!


「あ、菊丸先輩も抱きしめたかったんですか?」

「うん?…そうだにゃ、俺も抱きしめたいかも。」

「すみません、先にとっちゃって」


はい、と桜乃ちゃんはダイゴロウを差し出してきたけど。
俺はダイゴロウを受け取らずに、桜乃ちゃんの腕をひいた。


「!?」

「ん〜、やっぱ俺はこっちがいいかにゃ」


ぎゅ〜っと桜乃ちゃんの小さな体を抱きしめる。

「せっ、先輩〜!!」

「にゃはは」


真っ赤になって慌てる桜乃ちゃん。
あまりにも可愛いから、ちゅってほっぺにキスすると、更に顔を赤くさせておとなしくなった。


【抱き心地、良好】

(やっぱ男なら、抱きしめる側でしょ!)





end

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