短編

□君のもとへ
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今日は土曜日。
学校は休みだが部活は1日練習だった。
やっとこ練習を終えて、俺は着替えるため部室にいた。


「はあぁ〜…」


俺はユニホームのままで部室の中にある椅子に座って、盛大なため息をついた。


「どうしたんスか?丸井先輩。ため息なんかついて。そんなに練習疲れたんスか?」

「ちげぇよ、ただ…最近会ってないなって」

「誰とっスか?」

「彼女。」


ああ、と一年下の後輩である切原赤也は納得した。


「最近部活三昧っスからね」


常勝と言われている我が立海大テニス部は、当然練習量だって並みじゃない。
俺だってそんな部活に2年以上所属してるんだからそんなこと百も承知だし。
東京と神奈川っていう、距離のこともあるから、なかなか会えないってことくらいわかってたけどさ。


「あ〜、会いてえな…桜乃」


東京の青学に通っている恋人の桜乃。
あの可愛い笑顔を見たい。
高くて透き通った声で俺の名を呼んでほしい。
あの細い肩を抱き締めて、めちゃめちゃキスしたい。
完全に欲求不満だな…。


「そんなに会いたいなら会いに行けばいいじゃないすか。」

「は?今からか?」


今は午後の5時ちょっと前。
今から会ったってどこにもいけねえし…。


「会うだけはできるんじゃないスか?」

「……。」


確かにそうだ。
桜乃んちまで行って、外に出てきてもらえば、ちょっとでも会えるし話もできる。


「たまにはいいこと言うじゃねーか!赤也」

「たまに、は余計っスよ…」


そうと決まれば、さっさと着替えを終えて、なるべく早い電車に乗ろう。


「さっきまで椅子でうなだれてたのに、急に元気になったスね丸井先輩。」


着替え終わった俺は、
ちょっとだけ呆れた顔の後輩を無視して、さっさと部室を後にして駅に向かって走り出した。

会いたいから、会いに行く。


そう決めたら止まらない!




【君のもとへ】

(会えたらまず、思いっきり抱き締める!)




end

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