短編

□一緒の未来
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今日は部活は休み。
だが俺は今日も練習をしている。
…竜崎と二人で。


「竜崎、お前上手くなったな。」

「そうですか?」

「ああ。フォームもよくなってるし、パワーも前よりは全然上がってるしな。」

「宍戸さんにそう言ってもらえると、すっごく嬉しいです!」


竜崎の笑顔に思わずドキッとしてしまう。

二歳年下の竜崎桜乃とはテニスを通じて知り合って、数ヵ月前に付き合い始めた。
お互いテニスが好きだから、会うときはテニスコートの場合が多い。



「宍戸さんと練習していると、もっと頑張ろうって思えるんです」

「そ、そうか」


まっすぐな瞳には強い芯が感じられる。
純粋に強くなりたいって思ってるんだろうな。

そんな竜崎を俺は好きになったんだ。


「俺も負けられないな。」

「宍戸さんはもう充分強いじゃないですか〜」

「俺だってまだまだ強くなるぜ?」


満足なんかしない。
どこまでも上を目指すんだ。


「ふふっ。じゃあ頑張りましょうね!一緒に」

「ああ。ついてこれんのか?俺に」

「う…なるべく頑張ります。」

「ははっ!ま、無理はすんなよ?」



男と女だから、体力差があるのは当然だけど。

それでも、竜崎は本当に限界まで俺についてこようとしてるから。
そういうところも好きなんだろうな、俺は。


「そうだ。昼飯どうするか?ファーストフードかなんかで…」

「あ、私今日お弁当作ってきたんですよ!」

「マジでか!?」

「はい!食べてください、宍戸さん!」



やべえ、マジで嬉しい!!
しかも差し出された弁当は超うまそう。


「どうぞ」

「サンキュー!」


早速その弁当を一口食べる。
…うっわ。 超うめえ!



「どうですか?」

「うまい!!料理うまいんだな竜崎」

「えへへ。宍戸さんに美味しいって言ってほしくて、頑張ったんですよ〜」


俺のために、とか…。
かなり、嬉しい。


「マジでうめえぞ!お前いい嫁さんになれるぜ!」

「えっ!?」


急に竜崎の顔が真っ赤になった。何で…。

……あ。

な 何言ってんだ俺!!


「りゅ、竜崎!今のは…」

「う、嬉しいです。褒めていただいて」

「あ、ああ」

「えへへ…」


本当に何言ってんだよ、俺…。
激ダサだな。
ついポロって思ったことが口にでちまったんだ。


「宍戸さんも…」

「ん?」

「素敵なパパになれそうでそうですよね!」

「…パ!?」

「なんだか家族を大切にしそうです」


竜崎は少し赤いままで微笑んだ。


「そ、そうか。あ、ありがとな」

「は、はい。こちらこそ…」



なんだか照れくさい雰囲気になったので、黙々とただうまい弁当を食べながら、俺は少しだけ想像しちまったんだ。

俺と俺の子供。
そして…、竜崎がとなりにいて。

一緒に笑っている。

そんな未来。

すぐに恥ずかしくなって、考えるのはやめたけど。



【一緒の未来】

(いつか現実になるだろうか)





end

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