短編

□眠る君に愛を誓う
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目を開けると、俺の大切な少女の愛らしい寝顔が瞳に映った。

俺は時計を見る。
桜乃の肩をかりて寝てから、約1時間経っていた。


「30分で起きるつもりだったんだかな…」


こいつに負担をかけすぎてしまってないだろうか。
さっきまで寄りかかっていた細い肩にそっと触れる。


「俺が眠っている間に、自分も寝やがったのか。」


まったく、しょうがない姫だな…。
起きないようにそっと、彼女の体をこちらへ寄りかからせた。
すやすやと安心しきった顔で眠る少女。

…1時間前、こいつの前で俺は…。


『跡部さん、疲れてますよね?』


こいつに見破られてしまうくらい、俺は隠せてなかったのか。

…いや。

隠さなかったのか、…俺自身が。
こいつになら、桜乃だけには弱い俺も見せられる。
すべて見せても受け入れてもらえる、と。
俺の中の本能がそう感じたんだ。


「そしてお前は俺の求めたとおり、弱い俺をも受け入れたんだな。桜乃」


まだ眠る愛しい少女の体を支えながら、そっと囁いた。


「ん…」


起きたか?
いや…まだか。


「…ん…跡部さ…」

「ん?」


寝ぼけている桜乃に返事を返す。


「……それは、食べ物じゃないから食べちゃだめです〜…」

「なっ!?…どんな夢見てんだよ…ったく」


眉間にしわをよせてダメダメ言ってる桜乃。
『好き』とでも言うんじゃねーかって期待した自分を本気で消し去りたくなった。


「…跡部さぁん…」

「何だよ?」


呆れながらも律儀に返事をする俺。
我ながら馬鹿みたいだぜ。


「ふふ…大好きです〜…」

「!?」


期待を裏切った後の不意討ちの攻撃。


「お前は…寝言でも俺を夢中にさせる気か?アーン?」


桜乃はまだ、むにゃむにゃ寝言を言ってる。


「…ずーっと一緒に…いたいです…」

「…当然だ。離さねぇよ、絶対に。」


桜乃のそんな言葉には
寝言だとわかっていても嬉しく思う。
…どうせ、起きたらお前は忘れているんだろ?

だけど俺は忘れないさ。
お前が言ったことも、俺が言ったことも、全部。


「桜乃…。そばにいろよ?ずっと。俺にはお前だけだから」


俺のすべてを見せられるのも、すべてを委ねられるのもお前だけ。
…そして。


「…俺のすべてで愛してやる。」



俺が愛せる女もお前だけだ。

静かにそう言い切ると、眠っている桜乃は微かに笑ったような気がした。



【眠る君に愛を誓う】

(いつか、起きているときにちゃんと言ってやるぜ)



おまけ→
桜乃が目覚めた後(桜乃視点)
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