□Troublesome friend
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「なあ仁王、今日帰り暇?ちょっと付き合ってくんね?」

「ん?どこにじゃ」

「都内のお菓子屋!一人2個までしか買えない極上スイーツがあるんだよ。な、いいだろぃ?」

「2個じゃ足りんのか…まあ暇やし、いいけど」


立海大付属中テニス部3年で、クラスも一緒である丸井ブン太と仁王雅治。
土曜の午前練習の前、そんな約束をした二人は練習後その足で目的地に向かった。

しかしこの後、丸井は仁王を連れてきたことを後悔し、仁王は逆に丸井に感謝することなる。
その理由は…。



「あれ、丸井さんに仁王さん…?」

「!」

「…竜崎?」


丸井の用事が無事すんだ後に都内の街中で二人に声をかけた長いお下げを左右に垂らした少女、彼女こそがその理由そのものだった。


彼女の名前は竜崎桜乃。二人より二つ年下で、都内にある青春学園に通っている。
以前、青学と立海の合同合宿の際、祖母の手伝いで合宿に参加していた桜乃は、立海のテニス部員とも面識がある。
中でも丸井と仁王は桜乃のことを気に入って、合宿が終わった後も何度もコンタクトを取っているほどだった。
まさかの出会いに二人は喜びを隠しきれずに桜乃を囲う。


「こんなところで会うなんて偶然じゃのう」

「はい!お二人を見つけてびっくりしました」

「俺もびっくりした!でも会えて超嬉しい!」

「私も会えて嬉しいですっ!お二人は部活帰りですか?」

「ああ。丸井の用事に付き合ってこっちまで来てたんじゃ。お前さんは誰かと一緒に来たのか?」

「いえ、今日は一人でショッピングです。服を買おうかと思って」

「ふーん、一人でか…」

「一人でのう…」



はい!と答えながら、本当は友達と来るはずだったんですけど家の用事ができちゃったみたいで、と続ける桜乃。
丸井と仁王は桜乃の言葉を聞いてギラッと目を光らせた。


「「だったらー…」」


二人が続けた言葉は一緒だった。




・・・・・・


「…なんでお前までついてきてるんだよ」

「こっちの台詞じゃ」


一人で買い物に来たという桜乃に丸井と仁王は、俺が付き合う、と同時に申し出た。
せっかく会えたのだし、互いに時間があるのならそれはチャンス。
厄介なのが、自分と桜乃の他にもう一人いることだが、それこそお互い様な話だった。
桜乃は二人から同時に誘われ、なんの疑いもなく三人一緒でという意味で快諾した。

それから買い物の目的である服を選びに、三人はデパートに来た。
桜乃がよく来る服屋でいろいろと服を見て、ワンピースが欲しいと言った桜乃は、仁王が選んだワンピースを試着していた。



「だいたいお前、竜崎みたいなのは好みのタイプじゃなかっただろぃ」

「お前さんこそ、食べ物をくれる女なら別に竜崎じゃなくてもええんじゃろ」

「ばーか。誰でもいいわけないだろぃ。竜崎は特別なんだよ」

「…なら俺も『竜崎は特別』って言っておこうかの」

「むっ」


こそこそと嫌味の言い合いをしていた丸井と仁王だったが、試着室のカーテンが開く音が聞こえて同時に視線を向けた。
無地で深い青のワンピースを纏った桜乃が二人に声をかける。


「どうでしょう、変なところありませんか?」

「いいや、よーく似合っとるよ」

「…それも似合ってるけど、俺はさっきのオレンジの花柄のほうがいいと思うぜ」


このワンピースを着る前、桜乃は丸井が選んだオレンジの花柄のワンピースを試着していた。
こっちですね、とキープしてあったそれを桜乃は自分に合わせる。


「いや、青のほうがええじゃろ。落ち着いていて綺麗やし、無地やから着まわしもしやすいじゃろ?」

「花柄はそのままで可愛いし、上着変えるとかすれば着まわしもできなくはないじゃん。だいたい、その青じゃ竜崎にはちょっと大人っぽいだろぃ」

「そこがまたええんじゃろ。たとえばこのおさげをおろせば雰囲気も変わるだろうし」

「えっ?」

「どさくさに紛れて竜崎の髪触んな!おさげは可愛いからそのままでいいんだよっ!」


バチバチといがみ合いをしている二人の傍らで、桜乃は着ている青のワンピースと手に持ったオレンジのワンピースを見比べながらのほほんと笑う。


「なんだか、男の人から洋服についての意見もらうなんて新鮮なかんじ。お二人ともすごくお洒落ですから、参考になりますー!」

「……」

「……」


丸井と仁王は完全に自分の好みの押し付けをしていたのだが、素直に感謝をされてしまって毒気を抜かれてしまった。
それと、と桜乃は続けて試着室の奥からもう1着服を取り出す。


「もう1着、選んでもらったのを着てみますから見てもらえますか?」

「ああ、もちろん」

「着てみんしゃい」


そのワンピースは丸井と仁王が偶然同時に手を伸ばしたもので、腰のあたりにリボンがついたピンクのワンピースだった。
俺が見付けたんだ、とは言いたげな表情で二人は睨み合ったが、横から桜乃が可愛いワンピースですねと言うので、表情を笑顔に戻して仕方なく二人一緒に桜乃に勧めたのだ。
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