□幸せのメモリアル
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桜乃の誕生日にプロポーズをして、俺たちは4月の初め、桜が舞う教会で結婚式を挙げた。
あれから3ヶ月とちょっと経つ。
桜乃との新婚生活は、喧嘩もしないしほどよくラブラブやし、一言で言うと順風満帆やった。
『おはよう』や『おやすみ』を当たり前に交わす毎日が幸せでたまらない。
桜乃という大切な家族をずっと守っていきたいと思う。

…仕事からの帰り道、俺は桜乃が待つ家へと足を急がしたいた。
7月20日、今日は俺の誕生日。
朝、仕事に行く前に桜乃は「今日は早く帰ってきてくださいね」なんて可愛いことを言っていた。
桜乃のことだからきっと何か準備をしてくれているのだろう。
俺は楽しみな気持ちを胸に家への道を急いだ。




「ただいま」

「きゃあ!ひ、光さんっ」


…きゃあ?

玄関のドアを開けて聞こえてきたのはそんな声。
予想してなかった反応をされて怪訝に思いながら玄関を上がると、桜乃がぱたぱたと姿を現した。


「お、おかえりなさい光さん。は、早かったですね」


「…桜乃が今日は早く帰ってきてって言ったんやろ?」

「そ、そうでした…」



桜乃はいつものように俺の鞄を持ってくれるが、表情は曇っていた。
俺はネクタイを緩めながらリビングに向かう。


「あ、あの…光さん」

「…ん?」


リビングへのドアに手をかけると桜乃が重々しく口を開く。



「…ごめんなさい!」

「…だから、なにがやねん」



さっきからの桜乃の態度から何かあったのは察することができるが、いきなり謝られても理由がわからない。
理由を聞くと桜乃はしょんぼりした顔のまま話始めた。


「…ケーキ、失敗しちゃったんです。上手く膨らまなくて…」


「…は?」

「それだけじゃないんです!おかずのお肉まで焦がしちゃって…!!」

「……」


言ってから下を向いてしまった桜乃をチラリと見てから、俺は手元のドアノブをガチャリと回してドアを開けた。
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