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□罰かご褒美か
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※「条件を逆手に」の続編です。
ずっと憧れていた仁王さんとお付き合いを始めて5ヶ月とちょっと。
この間私は仁王さんに言われて、仁王さんを下の名前、『雅治さん』って呼ぶようになりました。
まだ慣れてなくて、たまに仁王さんって呼んでしまうと、そのたびに雅治さんは私にキスをします。
雅治さんって呼ぶときに躊躇っていたら、名前で呼ばないとキスをするっていう条件を出されてしまったので。
…たまにキスがほしくて、うっかり仁王さんって呼んじゃったフリをすることもあるけれど、たぶん雅治さんにはバレちゃっているんだろうな。
なんだか私ばっかり振り回されていて悔しいです。
たまには雅治さんの照れた顔とか困った顔がみたいな、なんて思ったり…。
「雅治さん、クイズしませんか?」
「…唐突じゃの」
だからちょっと、挑戦します。
雅治さんを照れさせたい大作戦です!
突然の私の提案に、雅治さんは雑誌を読んでいた手を止めて視線を私に向けました。
「正解したらご褒美に頭をなでなでしてあげます!」
「……桜乃が、俺を?」
「そうですよ!雅治さんがいつも私にしてくれるみたいに、優しくなでなでしますっ」
「ほう…」
「でも不正解だったら…恥ずかしいことしちゃいます」
そう言うと雅治さんはピタッと一瞬動きを止めて、じっ…と私を見てきました。
「恥ずかしいコトってなんじゃ?」
「知りたいですか?」
「すごく」
「ふふ、でも教えませんよー!不正解だったらわかりますよ」
「…不正解しろって言ってるのか。変なクイズじゃのう」
「えっ?なでなでより恥ずかしいほうがいいんですか?」
「なでなでも捨てがたいが、桜乃がする『恥ずかしいコト』にはめちゃくちゃ興味あるからの」
さすが不思議な人です雅治さん。
興味があるからって恥ずかしいほうを選ぶなんて。
それに…私はただ真似をしているだけなんだけどな。
「それで、クイズってのは?」
「あ、はい。ではいきます!私と雅治さんは出会って1年半が経ちますね?」
「ああ」
「そこで問題です!私がいつから雅治さんのことを好きだったのかわかりますか?」
「……」
去年の7月、私は雅治さんと知り合った。
そして出会ってから1年経った今年の7月、胸にあった溢れそうな気持ちを堪えきれずに雅治さんに伝えると、雅治さんは私の気持ちを受け入れてくれた。
私がいつから雅治さんに恋をしていたか、人を見抜いてしまうのが得意な雅治さんなら気付いていたのかな?
「…思った以上に難問じゃのう」
「そう、ですか?」
「…ん…じゃあ…去年の秋からで。 」
「! 正解ですっ!」
「…え?」
当てられてしまいました。
やっぱりあの頃から気付かれていたんだ…恥ずかしい。
…なんて思ってたら、仁王さんもなぜか驚いた顔をしていた。
「正解なのか?」
「はい、気付いていたんじゃないんですか?」
「…いや、まったく。そんな前からだとは…思っていなかったぜよ。だから外すために…」
「…私、仁王さんへの片想い期間結構長かったんですよ」
「そうらしいのう。…俺と同じくらいじゃな」
「え?」
それって…もしかして仁王さんも同じ時期から…?
どうしよう、そう思ったら顔が熱くなった。
そうだったら嬉しいな…なんて。
「…それで、ご褒美。くれるんじゃろ?」
「…あ、はい!」
私は手を伸ばして仁王さんの頭をなでなでする。
仁王さんはその間優しい瞳でじっと私を見つめていた。
「ところで、なんでなでなでがご褒美だったんじゃ?」
「それは…雅治さんが私を褒めてくれるときいつもしてくれるから…今日はお返しです」
「ふうん…なるほど、たまにはええのう。逆なのも」
「えへへ」
自分より年上で、背も高くて大人っぽい雅治さんをなでなでするのはちょっと不思議な感覚だけれど。
雅治さんが喜んでくれているならよかった。
「…で。恥ずかしいコトって結局なんだったんじゃ?」
「え?ああ、えっと、不正解だったら私からキスしようかなって思って」
「…なんじゃと!?」
途端に仁王さんは目の色を変えて私にずいっと迫ってきました。
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