□誕生日の奇跡
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リョーマくん、元気にしていますか?
今日は、リョーマくんのお誕生日だね。おめでとう!

いつも、アメリカでのリョーマくんの活躍を聞くのが楽しみです。
私もテニスを続けているよ。いっぱい頑張って、もっともっと上手になってリョーマくんに認めてもらえるくらいのプレイヤーになるのが目標です。
だからね、これからもずっと私と――・・・


・・・・・・・



「うわぁ…人多いなぁ」

私はテニスの練習をした帰り、商店街に寄ってみたんだけど平日なのに人で溢れている。
それもそのはず…12月24日、今日はクリスマス・イブ。商店街はたくさんの人で溢れていた。
私は今日は予定が無くて、クリスマスっぽいことはしないでいつも通りテニスをして過ごしていた。でも、明日は桃城先輩が企画してくれた青学テニス部のクリスマスパーティーに朋ちゃんと一緒に参加させてもらうことになっている。
だから私のクリスマスは明日なのです。
今日はむしろ、クリスマスじゃなくて…。


「ちゃんとメール届いたかな…」


12月24日はリョーマくんのお誕生日。私はアメリカにいるリョーマくんに、向こうの時間で24日になったころにおめでとうのメールを送った。
リョーマくんは夏の全国大会で青学が優勝したあと、すぐに渡米した。
あれから数ヶ月経ったけれど、日本に居ても何度かリョーマくんの活躍は耳にしている。

そばで応援できないのが寂しくないわけじゃない。
でも…、リョーマくんはあんなにすごいのに、今も遠くでいっぱい頑張っているんだって思ったら、私ももっと頑張ろうって思えるから。
いつかリョーマくんに追いつけるように…。
…なんて、大きな夢すぎるけど。

今日、商店街に寄ったのは…リョーマくんのお誕生日プレゼントを買うため。
いつ渡せるかわからないし、ずっと渡せないかもしれない。
でも、あげたいなって思ったら止まらなかった。
リョーマくんに何をあげたら喜ぶんだろう、って選ぶのが楽しかった。
この感情は憧れとは別の…、きっと伝えることのない私の気持ち。
リョーマくんは夢を追いかけている。私が気持ちを一方的に伝えたら、邪魔になる。
重荷とか、面倒とか思われるくらいなら、…今のままでいたいから。

渡せるか渡せないかわからないプレゼント。リョーマくん、プレゼントなんか渡したら気づいちゃうかな…渡さない方がいいのかもしれない。
私はまるで自分の気持ちを胸の中しまうように、鞄の中にプレゼントをしまった。


「…もう暗くなっちゃったな」


日が短い冬は、あっという間に日が落ちる。
夕方になって人もさらに増えてきたように思える。

帰ろうかな、って思ったけれど、私はふとこの商店街の広場に大きなクリスマスツリーがあることを思い出した。
せっかくだし、見に行こうかな…なんて、思って広場に行ってみた。


「うわぁ…、綺麗…」


イルミネーションが施された大きなツリーはそれはそれは綺麗で。思わず感嘆の声が上がっちゃう。
…だけど。
そこらじゅうにカップルだらけ。そりゃあそうだよね、今日はクリスマス・イブだもん。
可愛い格好した女の子が、彼氏さんと「きれいだね」なんて言い合っていて。
私は、練習帰りだからジャージ姿で、可愛い格好もしていないし、一人だし。
…そばにいたい人が近くにいないことを、今更実感して。
このツリーを一緒に見れたら…、なんて思ったりして。

…会いたいなぁ。


「リョーマくん…」

「…何?」


今、思わず名前を口に出しちゃったんだけど。
そんなことより、返事が聞こえた気が…


「まさか、有り得ないよ。だってリョーマくんはアメリカにいるんだもん。こんなとこにいるはず…」

「…ねえ、何言ってるの竜崎。俺はここにいるんだけど見えてないわけ?」


リョーマくんの顔がずずいっと目の前に迫ってきて、はっきりとそう言われたとき私は「きゃああ!」と叫びながら後ずさった。
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