AKAITOだらけのボカロ一家

□KAITOだらけのボカロ一家・その29
1ページ/2ページ

KAITOだらけのボカロ一家・その29

こんにちは、または初めまして、次男カイトです。
ある日、マスターの部屋を掃除していた時のことです。
マスターは仕事で収録中ですから、邪魔されることなくこの散らかり放題の部屋を掃除できます。いつもいつもこの部屋の惨状をどうにかしたいと思っていたので、今日は徹底的にやらせていただきますよ。マスターが部屋に入って思わず本当に自分の部屋なのか確認したくなるほど綺麗にしてやります。
手始めに床に散乱している雑誌や本を片付けます。
全く……こんな床が見えなくなるほど散らかすって、ある意味才能じゃないですか。このまま片付けないでいたら人外魔境になりそうですよ。
同じ種類ごとに、適当ではありますが本棚に並べていきます。しかし多いです……重いです。
なんとか散らかった本は全部棚に収まりました。本だけでも片付けたら大分違いますね。
しかしまあ、はしたない本の多いこと。こんなの、とてもじゃありませんが三男カイトには見せられませんね。やれやれ。
……そういえば、ベッドの下というのは要確認事項だったような。
好奇心に負けて、ベッドの下を覗いてみました。ですが、何もありません。むぅ、やはりマスターがそんな単純なところに隠しているわけが無いですね。ちょっと残念です。
でもこれだけ隠す気のないものが溢れているような部屋ですから、今更ベッドの下なんていう面倒くさいところに隠すはずがありませんね。っていうかむしろ隠してください。なんでこんなに堂々としてるんですか。
さて、次は床を拭きますか。
持ってきたバケツに雑巾を浸して、強く絞ります。
うっすらホコリが積もっている床は、マスターが移動した跡がくっきり残っています。目に見えるくらいですからこれは酷いです。
雑巾で床を拭き終わり、改めて部屋を見渡しますと、たったそれだけなのに見違えたように綺麗でした。ただ本を片付けて床を拭いただけなのに。どれだけ散らかっていたのかがよく分かります。
さて、次は……と考えていると、部屋のドアが音を立てて開かれました。
「ごるぁー!てめー何してんだこのやろー!」
うわ、最悪です。マスターが帰ってきました。
マスターは眉間にしわを寄せた険しい顔で、入ってきた勢いのまま僕に詰め寄ってきました。
「何勝手に片付けてんだよ!割烹着なんか着やがって、似合いすぎだろうが!」
そう言う間にも、マスターはどこからか出したカメラを構えて写真を撮りまくっています。更に携帯電話のカメラでも撮ってます。
「ちょ、いきなりなんですか。っていうか何してるんですか」
「待受に設定、と……で、てめえは何してくれてんですかこのやろう」
ちょ、待受に設定ってなんですか。面倒くさいので、怒るなら怒るだけにしてくださいよ。
「何って……掃除です」
正直に言うと、マスターの右手が僕の顔に迫ってきて、殴られるかと思ったら何回も何回も頬をつつかれました。
「ちょ、いた、や、やめ、ちょ、やめてください!」
痛いしくすぐったいし鬱陶しいです。逃げても逃げてもつつかれて、結局逃げることを諦めました。
つつかれるままにしていると、マスターはまだ険しい表情を崩さず、
「うるせぇ。俺の部屋のものを勝手に弄ったりすんな」
「弄ったり、って……いた、ちょ、ただの、ああもう!掃除じゃないですか、ってもうやめてくださいっ」
「なんか面白いからやだ。まさか本棚の裏とか覗いちゃいないだろうな」
本棚の裏……? 本棚の裏に何かあるんでしょうか。
「いえ、ベッドの下なら確認しましたが」
「……………」
手が疲れた、と言って、マスターはつつくのをやめてくれました。が、代わりに一発デコピンをされました。
「いたっ」
「バーカ、そんなとこに隠すわけないだろ」
「何か隠してあるんですか」
「……………ヒミツ」
「……へー」
本棚の裏、でしたよね。
マスターに止められる前に、僕は床を拭いているときに見つけた床下の蓋を外しました。マスターの言ったことなんてどうせ偽者に決まってます。そんなので騙せるのは5歳児くらいのものですよ。
「ぎゃー!何してんだー!」
マスターの悲鳴を背景に中を覗くと、丁寧に積まれた本が山のようにみっちりと並んでいました。うわぁ、これは酷い。
……ん?あれ?
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ