AKAITOだらけのボカロ一家

□徒然ログ
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…………あ。

「逃げても無駄つってんだろ」
「この変態! 離してください!」
もうここまで来てしまうと、ミクのコスプレをさせられてもさほど動じなくなってきました。またか、と。正直そういう気持ちの方が強いです。
ですが、こういうことはいくら僕でも我慢出来ません。
「ちょっと! ちょっとでいいから!」
「わっ! だ、止めてください!」
「ホント、下のラインが見えるか見えないかってとこでいいから!」
「だぁぁっ! ますます変態くさいこと言わないでください!」
ミクの衣装の、ミニスカートを、自分で持ち上げろと。
誰がしますかそんなこと!馬鹿じゃないんですか!
しかも恥ずかしがりつつ、だの、少し足を開き気味で、だの、細かい注文までしてきます。
あのですね、こういう格好させられてることがもう恥ずかしいんですよ。分かってますかそこらへん。
きっと分かってないマスターは、ますますハァハァしながら僕のスカートをめくろうとしてきます。
その不埒な手に反抗して頑張って裾を死守しようとしているのですが、徐々に力負けしてスカートの裾が上がっていきます。それに気付いて、マスターは僕を見てニヤリと笑いました。
正直顔から火を吹きそうなくらい恥ずかしいんですけど。もうやだ……うぅ……
「いい加減、観念、しろ」
「や、です……っ」
上下に強く引っ張られ、スカートが今にも破けそうです。そろそろビリッといきそうです。
ですが負けられない戦いというものはあるんですよ!
そう挫けそうになる心を叱咤していると、リビングのドアがガチャッ、と開きました。
「カイトさーんっ、遊びに来たよー!」
玄関開いてたから勝手に入っちゃったー!
「……………」
「……………」
「……………」
……………え?
「わ、わぁぁあぁあ!? やっ、やだミク! 見ないでー!」
「カイトさん、その格好……」
「わー!わー!」
さ、最悪です! よりによってなんでこんなとこを見られなきゃいけないんですか!? しかもミクの格好してるところをミクに見られるなんて、最悪にも程があります! ミクからしたら嫌がらせ以外の何物でもないじゃないですかっ!
そうだちょっと身を投げてこよう、と深く深く絶望していると、ミクから予想外の言葉が出てきました。
「ミクとお揃いだねっ!」
「へ?」
「カイトさんとお揃いってちょっと嬉しい! ね、ね、パンツも一緒? 一緒?」
「へ………?」
「見せてー!」
「わー!?」
ちょ、なんですか!? なんでミクにまでスカートめくりされそうになってるんですか!? ミクは何を言っているんですか!?
ああああ……妹のような存在にスカートめくりとか……ないです。正直ないです。羞恥プレイにも程があると思います……泣きたい。ぐす。
しかし、僕のスカートに手を伸ばすミクを、マスターが邪魔していました。
「おいちびっこ。カイトのスカートの中身を知っていいのは俺だけなんだよ」
そう言って、ミクの腕を強く掴んでいます。それはもう食い込むほど強く。
ミクはミクでマスターに威圧にもその手の力にも全く動じず、
「えー? ミクも見たーい!」
と言って唇を尖らせています。
「誰が見せるか」
「なんでぇ?」
マスターとミクの間で、一瞬火花のようなものが弾けたように見えたのは気のせいだったのでしょうか。
二人は僕のスカートについてギャアギャアと言い合いを始め、僕は一人蚊帳の外に取り残されました。
あれ、もしかして今、スゴいチャンスじゃないですか?
言い争うのに夢中になっている二人に気付かれないよう、そっと離れます。そろりそろりとリビングを出て、ドアをそっと閉めます。二人は気付かなかったみたいです。
……あああ。良かった。逃げられました。
強張っていた肩の力を抜き、安堵のため息をついていると、玄関のドアが開く音がしました。
「お邪魔しまーす。うちのミク来て……」
「……………」
「……………」
「……ミク、お前いつの間にそんなに逞しく」
「う、うわぁぁぁあん!!」
なんで僕がこんな目に合わなきゃいけないんですかー!!
毛利さんの理解出来ないものを見る目が忘れられません……うぅ、もうお嫁に行けない……
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