@KAITOだらけのボカロ一家

□KAITOだらけのボカロ一家・その1
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「マスターは『始○カイトの暴走』を手に入れた!」
マスターがそう高々に言って、僕たちに向かって親指をビシッと立てました。
……何なんですか。一体。

どうもこんにちは、次男カイトと申します。昼下がりののんびりとした時間、僕が洗濯物を畳んでいると、いきなりマスターが変なことを言い出しました。
「……始○カイトの暴走?何ですか、それ」
「曲? なんかどっかでそんな本見たことあるような……」
僕より後にインストールされたという意味の三男カイトは、見ていたテレビから視線を外してパソコンの前にいるマスターに首を傾げています。
「つーか、また変なこと考えてんでしょ」
僕より先にインストールされた長男カイトが、本から顔をあげてげんなりとした顔をしました。
「HAHAHA! 鋭いなカイト! だがお前に拒否権はない!」
長男カイトに向けて、またマスターが言います。長男カイトは舌打ちして顔を背けました。そして深い溜め息をついています。
マスターがいつもより生き生きしてるときは、大抵僕たちにとって嬉しくない事になることが多いのです。
警戒する僕と長男カイトを余所に、三男カイトは1人無邪気で。
「それで、何なんですか?その始○カイトの暴走って」
なんの疑問も持たないその笑顔は、同じ顔ながら天使のようです。この場で唯一の心の清涼剤です。
「よくぞ聞いてくれた!」
テンション高いなぁ、と辟易しながら思っていると、マスターはパソコンの操作をしました。
「あ、やっぱり曲なんですか?」
「そう!」
歌えるなら、まあ、まだマシな方かな、と思います。この間はいいもん見つけた! と言って、ワサビアイスを無理矢理食べさせられたんです。あんなのアイスじゃありません。ただの冷たいワサビです。あれには流石の三男カイトも泣いてたし、ああ思い出して鼻の奥が痛くなってきました。
「曲……なら……でも」
長男カイトも僕と同じように、あのアイスを思い出したんでしょう。曲と聞いて心なしか表情が緩んでいます。マスターの曲は、なんだかんだ言っても、とても素敵なのには間違いありませんから。
だけど、僕たちのその考えは、ハーゲンダッツのキャラメルリボンにリッチミルクを添えて更にチョコレートシロップをかけたアイスより甘かったんです。
うぅ、ハーゲンダッツ出されても許しませんよマスター!
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