@KAITOだらけのボカロ一家

□KAITOだらけのボカロ一家・その3
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KAITOだらけのボカロ一家・その3

こんにちは! 三男カイトです!
オレの家にはKAITOが三人いるので、区別するために下の兄さんがそう呼んでたのを使ってみました。今日はオレの家族の話をします!
上の兄ちゃんは意地悪だけど頭が良くてカッコいい人です。下の兄さんは優しくて家事も上手なスゴイ人です。
オレはよくバカイトとか言われて、あんまりできが良くないみたいです。でも! 歌なら負けないです! オレの歌は世界を救いますよ!
すみません調子に乗りました。ぶたないで下さい。
でも、オレの歌は世界を救えるかわかりませんが、少なくとも兄さんを救うことはできるみたいです。
兄さんはマスターの食事や洗濯に掃除、何でもできます。マスターがそういうKAITOが欲しかったからだそうです。
だから兄さんはオレの家で一番の働き者です。オレも、兄さんが作ってくれるご飯は大好きです。部屋もピカピカで、服は綺麗で良い匂いまでします。マスターや兄ちゃんが、「良いお嫁さんになれる」とよく言っています。オレもそう思います。
でも、兄さんはアンドロイドなのによく「疲れた」って言います。家事疲れだそうです。献立を考えたり、部屋をいつもピカピカにしたり、服にアイロンをかけたりするのは兄さんだけだから、アンドロイドでも疲れるのかもしれません。
だから、オレは歌を歌います。兄さんを応援する歌です。
オレも兄さんを手伝えたらいいのに、マスターが「天然ドジっ子萌え!」とか言ってパッチをあててくれないんです。だからオレは兄さんの手伝いができません。手伝うと余計に困らせてしまうのは、バカイトなオレでも学習しました。
料理をすると美味しくないし、掃除をすると何故か散らかるし、洗濯すると泡だらけの服ができちゃうんです。そういう風になってるんです。VOCALOIDは。
VOCALOIDは基本的に歌を歌うアンドロイドです。だから、搭載されている機能は歌を歌うことだけで、他には何もできません。兄さんは家事をできるようになるアンドロイド専用学習パッチをあてられているので、なんでもこなせるんです。
オレもそのパッチをあてて、兄さんと一緒に料理とか、掃除とか、洗濯とか、やってみたいです。そうしたら兄さんの負担も少しは軽くなると思うのに。
仕方が無いから歌います。オレの歌は兄さんを元気にする歌です。兄さんにいつもありがとうって言うのと、頑張ってねって言う歌です。
洗濯物を畳む兄さんの傍で、オレは歌を歌います。洗濯物畳みの歌、作詞作曲はオレです。何それ、って兄さんは言うけど、すぐに笑顔になって、オレの歌を聴きながら家事をして、最後にはオレと一緒に歌っています。家事が一段楽した後、兄さんはありがとうって言ってくれます。そのありがとうっていう声が優しくて、暖かくて、オレはそのありがとうがとても大好きです。
今日もオレは歌います。世界を救えるかは分からないけれど、少なくとも兄さんを元気にさせている気がする歌を、精一杯心を込めて歌います。
兄ちゃんみたいに頭も良くないし、兄さんみたいに何でもできるわけじゃないけれど、歌ならオレだって負けません。それがオレにできる唯一のことですから、一生懸命頑張ります。頑張って、頑張って、もっと皆が笑顔になるような歌を歌ってみたいです。でもオレたちの歌を聴く人はいません。マスターは世界的なピアニストだったそうで、今は作曲をして暮らしています。マスターが作った歌に詞を乗せて、俺たちはマスターが作った歌を歌います。それを聞いてマスターは嬉しそうにします。ご褒美も貰えます。
でも、オレたちの歌はいまのところ、マスターにしか聞かせる相手はいません。マスターが喜んでくれるし、兄さんもオレの歌は好きって言ってくれるので、特に不満はありませんが、少し調子に乗ってみたいと思うときもあります。
オレの兄ちゃんはすごいんだ、オレの兄さんはすごいんだ。オレの歌だってすごいんだ。わかったらオレたちの歌をきけぇぇぇえぇ!!
って叫びたくなります。
でも、俺たちの歌を聴いてくれる人はいません。時々それがすごく物足りなくなるときもあります。
でもマスターはオレたちの歌でお金を貰いたいとは思っていないそうです。「お前らは誰のためにいる? そう! 俺のためだ!」だそうです。
それはそれですごく嬉しいので、まあいいやと思います。マスターが嬉しいなら、オレはいくらでも歌います。マスターがもっと喜んでくれるように、オレはもっと頑張ります。
あ、そういえば兄ちゃんの話をしていませんでした。
兄ちゃんは、意地悪です。
よくオレのアイスを横取りします。
それも、横取りなんて可愛いものじゃないです。すごく巧妙です。
たとえば、オレがとっておいたダッツのリッチミルクを食べてみると、やけにあっさりした味がして、不思議に思ってもう一口食べると、今度はダッツとは思えないさらっとした感触があって、オレはそれをよぉーく味わって、ようやくそれがリッチミルクの容器に移されたスーパーカップだと分かりました。
誰が一体こんなこと! と泣いていると、兄さんがやってきて、「どうしたの?」と聞きました。リッチミルクがスーパーカップになっているということを言うと、兄さんは少し怒った顔になりました。
兄さんはすぐに兄ちゃんを呼ぶと、オレの偽者ダッツを突きつけて、「これ、兄さん?」と聞きました。聞くまでもなくそのときの兄ちゃんの手にはスーパーカップが握られていて、しかも中身はもうありませんでした。
「だ、だ、ダッツは!? オレのダッツは!?」
「ああ、食った」
「ガァーン!」
その後はショックでスーパーカップを見るたびに悲しい気持ちになりました。あのときばかりは兄ちゃんにリッチミルクを貰うまで兄ちゃんを許せなかったです。
あ、でも、兄ちゃんだって優しいひとなんですよ?
歌っていて分からないところは教えてくれるし、ご飯だってオレの好きなものが出ると分けてくれます。
だから兄ちゃんも優しくて、良い人なんです。
でもアイスだけは横取りされちゃうんです。むぅ……
特にダッツを狙ってくるので、オレは冷凍庫にダッツをとっておくのは止めました。すぐに食べちゃわないと、とっておくと直ぐに兄ちゃんの餌食です。兄ちゃんは「置いてあるから腐らないように食べてやったんだ」なんて言います。でも! オレ知ってますよ! アイスは冷凍庫の中だと腐らないってことを! このあいだテレビで言っていたので、間違いないです! だから兄ちゃんが食べるのは間違ってます!
……でも兄ちゃんは頭がいいので、オレの言うことは全部うまくかわされます。うー!

これが、オレの家族です。歌を作るのが上手なマスターと、頭が良くて少し意地悪な兄ちゃんと、優しくて料理の美味しい兄さんが、オレの大好きな人たちです。
オレはオレの家族が大好きです。世界で一番大切な人たちです。
オレは歌を歌います。世界を救えるかどうかは分からないけれど、兄さんを元気にさせて、マスターを嬉しくさせて、兄ちゃんと遊べる歌を、沢山歌います。
それがオレの生きがいです。
あ! オレ、今カッコいいこと言いました!? オレ、難しい言葉も知ってるんですよ!! スゴイでしょ!?
えと、だからオレはこの家が好きです。えへへ。
あ、じゃあ晩御飯らしいのでもう行きますね。いっぱい話聞いてくれて、ありがとうございましたー!


End.

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