@KAITOだらけのボカロ一家

□KAITOだらけのボカロ一家・その6
1ページ/3ページ

KAITOだらけのボカロ一家・その6

こんにちは、もしくは初めまして。次男カイトです。
最近急に冷え込んできましたので、皆さん風邪を引かないようにどうかお気をつけて。
風邪を引くと大変ですよね。僕たちはそういうものとは縁がありませんが、ウィルスに侵されると所謂風邪の諸症状に似たようなものが発症します。ですので辛さはよく知ってます。
頭はクラクラするし、目は霞んでくるし、喉は痛くて声も出せないようになる、というのは人間もアンドロイドも一緒です。酷いと死んでしまうのも同じです。
幸いなことに僕や長男カイトに三男カイトは、そこまで酷いウィルスに感染したことはありません。一度三男カイトがトロイに感染して大変なことになりましたが、発見が早かったので大事には至りませんでした。
皆さんも風邪には十分気をつけてくださいね。
「カイトー…頭痛いー…」
「大丈夫ですよ。ほら、食べてください」
「食欲ないー…」
「駄目ですよ、薬が飲めません」
「うぅー…」
鼻が詰まって変な声になっているマスターに、湯気の立つ卵粥をレンゲで掬って差し出すと、マスターは渋々口を開けてくれました。
息を吹きかけて少し冷ました粥を食べさせると、マスターはひどくゆっくりと咀嚼しています。熱が酷いので、動作が鈍くなるのも仕方ありませんね。食べ終わるのを待って、また一口差し出します。
「マスター、あーん」
「あー…」
もぐもぐと食べるマスターが、いつもと比べてとても元気がありません。マスターは一度風邪を引くと、酷くなってしまう体質のようです。
大人しいマスターというのは落ち着きませんが、いつものように元気ではおちおち看病も出来ないので、これはこれで丁度よくて助かります。
「だからお風呂から上がったら直ぐに髪を乾かして、半裸でうろつかないでくださいと言ったでしょう。それなのに昨日も遅くまで作業するからこんなことになるんです」
「うー…だっで蒼い鳥が俺を…」
「呼んでません。あんな歌くらい、僕たちだったらいつでも歌えます。無理して聞こうとする必要はありません。いいですか?」
「…はい」
また卵粥を食べさせて説教すると、マスターは余程辛いらしく素直に頷いてくれました。これ以上怒る必要も無いので、許してやることにします。
「今日は一日大人しくしておいてくださいね。薬飲みますよ」
「はーい…なんかお前お母さんみてぇ…」
「誰がアンタの母さんですか」
そこだけは訂正したいので言い切ると、マスターは珍しく何も言いませんでした。風邪の力は偉大ですねぇ。
「なーカイトー…その薬口移しで…」
「嫌です」
変態は大人しくしてなさい、この変態め。

マスターを寝かしつけてから部屋を出ると、心配そうな顔の三男カイトが部屋の前で待っていました。
「マスター、大丈夫?」
「うん、今寝かせたところ。薬飲んで暖かくさせたから、明日には治るんじゃないかな?」
希望的観測も含めてそう言うと、三男カイトは心の底からホッとした、という感じで表情を緩めました。良い子ですね、三男カイトは。あんな変態の心配までするんですから、本当に良い子です。
「お、オレ、マスターに子守唄歌ってくる!」
「あ、待ってカイト。あんまり煩くしたら駄目だよ」
「分かった!」
もう寝た後なんですけど、マスターも傍に誰かが居た方が安心するかもしれません。そう約束させて三男カイトの入室を許可しました。すると三男カイトはすぐに部屋に飛び込んでいったので、ああ本当に優しい子だ…となんだか涙が出てきました。
キッチンで食器の後片付けをしていると、長男カイトがひょっこり顔を出しました。
「マスターの調子どうだ?」
「少し熱が高いかな…あとは咳と鼻水が酷いかも。薬飲ませたから、少しは楽になったと思うけど。明日には治るよ、多分」
「そうか」
食器を洗いつつそう言えば、長男カイトも少し安心したように肩の力を抜きました。
「兄さんも心配した?」
「そりゃ自分のマスターが辛そうだったら心配もするって。たかが風邪でもな」
「それもそうか」
長男カイトのことだから、いつものように悪巧みされないのでむしろ安心しているかと思いました。流石にそこまで非情じゃないらしいです。
皿洗いも終わったので、次にやることをしましょうか。
「で、それは何?」
「ん?ああ、生姜湯作ろうかなって。喉にいいらしいよ」
「へー」
スーパーの袋から買ってきた生姜を取り出して、適当に切っておろし金でおろします。鍋で水と一緒に少し煮て、蜂蜜を入れれば出来上がり。
「飲んでみる?」
「ん」
コップに少し入れて長男カイトに渡すと、それを飲んだ途端長男カイトは喉を押さえました。
「うわっ、喉が熱い!」
「そういう飲み物だもの。起きたらマスターにも飲ませないとね」
あまり煮るのはよくないらしいので、直ぐに火を消して鍋に蓋をしておきます。マスターが起きたら暖めて飲ませてあげましょうかね。
「あ、でも慣れると美味しいな」
「そう?なら良かった」
ちびちびと生姜湯を飲む長男カイトに笑って、僕は家事に戻ることにしました。
「じゃあ、マスターのことよろしくね」
「おう」
三男カイトに看病の仕方を教えても分かってくれなかったので、少し不安ですが長男カイトに任せることにします。
…マスターが弱ってるからといって、チャンスだと思わないでくださいね、兄さん。本当に任せましたからね。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ