@KAITOだらけのボカロ一家

□KAITOだらけのボカロ一家・その7
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KAITOだらけのボカロ一家・その7

こんにちは、または初めまして、次男カイトです。
今日は珍しく、ウチにお客様がいらっしゃいました。
玄関のチャイムが鳴り、僕は生憎昼食のうどんを作っている最中でしたので、暇そうな人に頼むことにしました。
「マスター、チャイム鳴ってます」
「ああ、そうだな」
「…出ないんですか?」
「必要がない」
ぴしゃっと言い切るマスターは、チャイムが鳴ったことに明らかに苛立っていました。そうでした、マスターが密林からのお届けものでもない限り、外部と接触を持とうとするはずがありません。頼む相手を間違えた、と僕は同じく暇そうな長男カイトに頼むことにします。
「ねぇ兄さん、ちょっと出てくれない?」
「ヤダ」
「…なんで」
「面倒臭い」
これまたスパッと言い切られて、僕は少しげんなりしました。アンタら接客くらいマトモにしましょうよ。
「んー…じゃあカイト、お願いできるかな?」
「ふぇ?いーよー!」
行儀良く椅子に座って今か今かと昼御飯を待っていた三男カイトは、僕のお願いに元気良く頷いて玄関に走って行きました。ああ、他の二人とは大違いです。ご褒美に三男カイトの分には温泉卵を入れてあげましょう。
「あ、俺のキツネにしてな」
「じゃあ俺、天ぷら」
「アンタらには竹輪とネギで十分です。この引きこもり共」
麺を湯切りして出汁に落としたところで、玄関から三男カイトの歓声が聞こえてきました。はて。誰が来たのでしょう?
「マスターマスター!毛ちゃんさんが来ましたよ!」
玄関からリビングへまた走ってきた三男カイトが、喜色満面にそう言いました。そんな三男カイトとは対照的に、露骨に顔をしかめたのはマスターと長男カイト。
「げ。…俺、寝る」
そう言って席を立つマスター。それをすかさず引き止めます。
「駄目ですよ、お客様がいらっしゃったのに家主が昼寝なんて許されません」
「何でだよいーじゃんか別に」
「アンタに常識は言いませんが、知人が来て挨拶もしないのは尊敬出来ませんよ?」
マスターとそうやって言い合っていると、三男カイトに案内されたらしいお客様が四名。うち三名はVOCALOIDで、メイコ、ミク、カイトです。ただ一人の人間のお客様は、不貞腐れた表情のマスターを見るや、呆れた、という表情になりました。
「おい、なんだぁその顔はよぅ。折角来てやったんだからもうちっと嬉しそうな顔しろや」
「うるっせぇ、馬鹿。俺様の家にムサイ男と女子供はいらねぇんだよ。出てけ。帰れ。そんでKAITOは置いていけ」
「誰が置いていくか、って。寝言は寝て言えよ」
顔を見た途端、2人は互いに口煩く相手を罵っています。開口一番の口喧嘩に呆れて、メイコがその男性の腕を掴んで諌めます。
「何してんのよマスター、口論しに来たわけじゃないでしょ?」
「そうだよぅ、カイトさんの美味しいごはんをたかりに来たんだよねー」
メイコの後ろでニコニコ笑っているミクが言った言葉に、僕は苦笑しました。マスターも盛大に肩を落としています。
「お前ら…だったらんな大所帯で来るんじゃねぇ!つかカイトの手作り料理を食っていいのは俺とカイトだけだ!」
「ケチケチすんなよー。いーだろカイト?」
「勿論ですよ。一緒に食べる人が多いのは嬉しいことですから」
僕がそう言うと、マスターだけでなく長男カイトからもブーイングがきました。
「勝手に決めるな!マスターは俺だぞ!」
「そうだ!そうするなら俺のは天ぷらうどんにしろ!」
「どさくさに紛れて注文しないでよ!」
長男カイトの言ったことに突っ込むと、今度は客人各々が長男カイトの言葉に反応しました。
「じゃあ、ミクはネギうどんがいいなー!」
「アタシはお酒も欲しいわ。熱燗ないの?」
「俺は肉うどんでよろしく。肉2:麺1で」
「ちょ、ちょっと待ってください!ここは定食屋じゃないんですけど!?」
注文の多さに慄いていると、マスターの皮肉った笑みが。
「ほーらな。コイツら優しくするとすぐつけ上がるんだ。お前の蒔いた種だからな。俺は知らん」
「酷いですマスター!」
「酷くねぇよ。いーぜ別に、後で飯代は徴収するから」
すっかり拗ねてしまったらしいマスターは、そっぽを向いて黙り込んでしまいました。本当に子供なんですから、まったく。
「おいおい、これくらいおごってくれたっていいじゃねぇか」
「うるっせ。カイトの飯をタダで食おうなんざ一万年と二千年早いんだよ」
「なんのネタだよ」
肩を竦める男性は、拗ねきったマスターに突っ込みを入れると、放っておくことにしたようです。
「ま、いいや。カイトー、飯めしー!」
「…はぁ、わかりました」
大声でご飯をねだる男性も子供のようで、僕はVOCALOIDの相手をすると性格が退化するのかなぁ、と本気で思いました。
紹介が遅れましたが、この、メイコとミクとカイトを連れて来た男性は、3体のVOCALOIDのマスターなのです。
名前は毛利さん。マスターの数少ない友人の1人です。
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