@KAITOだらけのボカロ一家

□KAITOだらけのボカロ一家・その13
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KAITOだらけのボカロ一家・その13

こんにちは、または初めまして、次男カイトです。
今日は日頃からの疑問をマスターにぶつけてみることにしました。
お仕事中と分かっていますが、どうしても気になってきたんです。気になってしょうがないんです。僕は夕飯の下準備を終えて暇になったので、マスターの部屋を訪れました。
「マスター、聞いてもいいですか」
「なんだ。スリーサイズは教えないぞ」
「アンタのスリーサイズなんか聞きたくないです。…あのですね、マスターはKAIKOには興味ないんですか?」
「は?」
パソコンで作曲作業をしていたマスターは、目を点にしてこちらを振り向きました。
「KAIKO?っていうとあれか、美しければそれでいいの」
「はい」
頷くと、マスターは少し首を傾げて、またもとの作業に戻りました。
作業を続けながら、マスターは僕の疑問にこう答えてくれました。
「なんでそんなこと聞くんだー?」
疑問に疑問で返されても困るんですけど…。まあ、理由は特に大それたものではないんですが。
「マスターはよく僕たちにメイド服とかミクたちのコスプレとかさせるじゃないですか。それで、折角なら女の子に着せた方が楽しいんじゃないですか?」
はい、素朴な疑問です。決してKAIKOになりたい、とかそういうわけではありません。
実は、僕たちはあるパラメータを下げると、KAIKOになります。一度だけ、マスターが好奇心から長男カイトをKAIKOにしていましたが、すぐに戻していました。予想以上に長男カイトの反応が薄かったからか、それともすぐに飽きたのか、それもよく分かりませんが。
マスターは僕たちに女装をさせるわりに、女性には興味がないんです。不思議だと思いませんか?
「何言ってんだよ、俺はお前らがその服を着たところを純粋に見たいだけだ。KAIKOになんざミジンコほども興味ねーよ」
「はぁ…そうなんですか。ということはつまり、マスターは…」
そこで言葉を切ると、マスターはなんだよ、と言ってきました。気になるじゃないかと。
けれど、この先を言っていいものか。言わないと実力行使で言わされそうなので言いますが。
「いえ、マスターはその…ホモなんですか?」
「………は?」
ビシ、という擬音が付きそうなほど見事に固まったマスターが、蝋を塗っていないブリキ製の人形のようにこちらを振り向きました。
「…何言ってんの、お前」
「いえ、その、マスターは女性に興味がないと言うし、KAIKOにも無関心ですし、KAITOにばかり固執するのはやはりそうなのかな、と」
違うんでしょうか。絶対そうだと思ったんですが。
マスターは僕の言葉を聞き終わったあともしばらく考えていたようでしたが、ようやっと動いたかと思うと僕の頭にチョップをしてきました。
「あいたっ」
「お前なぁ…くだらんこと聞くな」
「少し気になっただけですよ。痛い…」
素朴な疑問ですよ。なのでこんな痛いチョップをされるほどのことを聞いたつもりはありません。
地雷だったんでしょうか。
「いいか、俺はホモじゃねぇ。…こんなこと言いたかねぇが、誰かのことがこんなに好きになったのはKAITOが初めてなんだ。それだけだ」
…えと、それはよくアレ系のお話で出てくる、「男だから好きになったのではなく、好きになった奴がたまたま男だっただけ」という言い訳でしょうか。
そういうことを言う人はホモらしいんですけど。じゃあやっぱりマスターはホモなんでしょうか。
「…マスター、それフラグ立ってます」
「なぬっ!」
「というかマスター、マスターの場合、人ですらないですね」
「まあそうだな」
「…アンドロイドは恋愛論の夢を見るかという奴ですか」
「それは電気羊じゃないか」
「はあ、そういえばそうでしたか。とりあえずマスターはホモですよね」
「断定すんな。俺はKAITOが好きなだけだ」
「力一杯ホモ宣言してるじゃないですか」
「……じゃあもういいよ」
「分かりました」
素朴な疑問が解消されました。やっぱりマスターはホモなんですね。
…じゃあ僕たちの貞操も危ないんですか?うわぁぁあぁ…やだなぁ。
「……実はカイトは済みって言ったらどうする?」
「え。ちょ、ちょっと冗談は止めてください」
「あとさ、無表情でそんなこと聞いてくんのヤメロ。顔赤いし。変な奴だな」
「え!赤いですか」
「真っ赤だな」
「えぇ…」
困りました。いつからでしょう。
…いえ、実はホモかどうか聞いたあたりから自覚はあったんですけど、ね。そんなに赤くなってますか…?
思わず顔を隠すように両手で押さえると、マスターは僕の頭に片手を乗せました。
よしよしと撫でられて、なんだかすごくいたたまれません。
「…あの、兄さんのこと、本当ですか?」
カイトって、兄さんのことですよね。冗談だと思いますが、マスターならありえそうで怖いです。
「いんや、嘘」
「そ、そうですよね」
「実は本当」
「ええ!?」
「どっちかなー?」
「ぇ、えぇぇぇ」
「実は弟の方」
「え、ええええ!」
「どっちかなー?」
「そんなー!」
さっきまであんなに驚いて固まっていたマスターは、すっかりいつものマスターに戻ってます。遊ばれているとは分かっていますが、マスターならありえそうで本当怖いんですよ。
「か、カイトはダメですよ!兄さんならまだいいけれど、カイトはダメです!」
「えー、なんでー?」
「なにがなんでもです!」
「つーか、お前カイトのことあっさり見捨てたな?」
「兄さんは…えーと、頼りになる兄ですから…」
「目を逸らして言うな」
マスターにまたチョップされて、僕は今度は顔ではなくおでこを押さえる羽目になりました。
「ま、俺がホモだろうがなんだろうが、お前らのことが好きなのには変わりないし?それだけでいいんじゃね」
「…はぁ、まあそうですね」
マスターはそれだけ言って、作業に戻りました。キーボードを叩く軽快な音だけが聞こえてきます。

…疑問は解消されると、新たな疑問を呼ぶそうですよ。
僕はそれを身をもって思い知ることになり、それから三日ほど長男カイトを思わず見つめてしまうことになってしまいました。
マスター、本当のところどうなんですか?


End.

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