@KAITOだらけのボカロ一家

□KAITOだらけのボカロ一家・その14
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KAITOだらけのボカロ一家・その14

こんにちは、長男カイトです。
カイトがマスターの部屋に行って何を話したのか知りませんが、何だか昨日今日とずっと見られている気がします。
…気のせいでしょうか。
熱視線というか、とても言えない雰囲気があってなんだか聞きにくいです。でもやっぱり気のせいではない気がします。
カイトが見ているなと思って振り向くと、さっと顔を逸らされるんですよ。やっぱり見られてるんでしょうか。
…でも何故?
考えられる原因といえば、昨日カイトがマスターの部屋に行ったことくらいです。それ以外、カイトはいつもと同じ生活をしています。
マスター、何吹き込んだんですか。

「マスター、何吹き込んだんですか」
カイトに。
昨日に引き続き作曲作業をしていたマスターは、俺をちらっとだけ見て直ぐに作業に戻ります。何気に集中力凄いんですよね。いや、集中力じゃないですね。一度に大量のことを同時に出来る能力が凄いんですよね。今もモニターを3つ広げていますが、その内一つが笑顔動画でもう一つがエロサイトですよ。せめて閉じるくらいしてくれませんか。見苦しいんで。
「あー?なんだお前らは。俺が仕事してる時に限って邪魔しにきやがって。猫か。この猫カイト」
「って言いつつ猫耳取り出さないでください。アンタのポケットは四次元ですか」
明らかにマスターのポケットよりも大きい猫耳が出てきました。物理法則無視してませんか。しかも無理やり付けられました。まあこれだけなら特に支障もないんで構わないんですけど。
「まあ多重次元構造を構築してうんたらかんたら四次元どころか五次元でさえうんぬんかんぬん」
頭に付けられた耳を撫でられるとすごく鬱陶しいです。やめて下さい。
「嘘おっしゃい。そんなのはどうでもいいんです、カイトですよ」
マスターなら作れてもこの際不思議でもなんでもない気がしますが、面倒くさがりのマスターが自分のズボン全てにそんな加工をしてるはずがありません。
そんなことはどうでもいいんです。それより、俺はあの視線が気になってアイスもおちおち食べられないんですよ。どうにかしてください。
「カイトぉ?何だ、何かあったのか」
「何かあったも何も、昨日マスターの部屋を出てきたときから様子がおかしいんですよ。何か知りませんか?」
「あーん?」
マスターは少し考えて、ああ、と手を打ちました。やっぱりアンタが原因なんじゃないですか。
「そういや昨日、俺がホモだなんだと言ってたなぁ」
「はい?なんですかそれ」
え、マスターってやっぱりそうなんですか。やけにKAITOばっかり好きって言うのは、やっぱりそういうことなんですか。
…今度から1人でマスターの部屋に入るのは止めることにします。押し倒されでもしたらと思うと背筋に悪寒が走りますよ。アンドロイドなのに。今すぐ部屋を出た方が懸命なような気もしてきました。
「あー、まあ自覚ないけどそうらしいぞ?で、それならそれでもいいやって思って。俺がお前を掘っただとか掘ってないだとかって言って遊んだ」
「アンタなんてこと言ってんですか」
そんな嘘八百、と言いたいところですが、俺もマスターがカイトやバカイトをヤッたとか言われたら信じますよ。だってマスターですから。
自分の、自分による、自分のためのKAITOハーレムを作ろうとしてるマスターですよ。信じるなと言う方が難しいです。
それならあのカイトの視線も納得しました。というかカイトも随分失礼ですね。そんなこと気にして俺を見てたんですか。あとで目一杯お仕置きしてやります。
「ま、かるーい冗談だって。気にすんなって言っといてくんね?」
「当たり前ですよ。そんなこと気にされちゃたまりません」
俺とマスターとの間に既成事実は一切ありません。あってたまりますか、そんなもん。
そこんとこたっぷり教え込んでおかなければいけないようですね。
「カイトー、目が笑ってないぞー」
「はい?ああ、すみません」
こんなときやっぱり眼鏡があった方が決まるもんですかね?あんなもの掛けただけで性格が変わるとは思えませんが。コスプレの一種ってことでしょうか。役にはまり込むとかいう、そんな感じで。
「マスター、ちょっと眼鏡貸してください」
「嫌。俺、これないと仕事できねぇもん」
「後ですればいいじゃないですか。マスターならそれくらい1時間で終わるでしょ。…眼鏡で猫耳な俺、見たくないんですか?」
「え」
チョロイですね。マスターはすぐに眼鏡を外すと俺に掛けました。その手にはカメラもしっかりあります。いつもいつも用意周到なことで。
「うーん、猫耳、眼鏡、ってきたら今度はゴスロリでニーソじゃないか」
「お客様、そこからは別料金が発生します」
「別料金ったってダッツだろ」
分かってるじゃないですか。まあ、ダッツ全種類が毎日出てくるくらいしてもらわないと、そんなことゴメンですけど。
そんなもの似合うわけないのにハァハァしてるマスターは凄いですよねー。しかも結構本気入ってますからねー。常人の感性じゃないですよね、本当。
「で、なんで眼鏡?」
「いえ、鬼畜眼鏡になれるかな、と」
「なれるかってキレてたくせに……」
それとこれとは別ですよ。マスター相手に鬼畜なんて負けが見えてるじゃないですか。アンタのほうが鬼畜度は圧倒的に上ですから。
「つーかさ、見えねぇから撮れてるかわかんねぇ」
「撮れてなくても俺は一向に構いませんから知ったことじゃないです」
「てめー」
カメラ構えてフラッシュ焚きまくってるくせに、撮れてないわけないじゃないですか。いい具合にピンボケしてくれてたら願ったり叶ったりなんですけど、無駄に高性能なカメラじゃそれもないでしょう。
しょうがない、後でデータを抹消しておきましょう。
「でもさ、ホモっつったマスターの目の前でそんなことするってのは誘ってるわけ?」
「はい?そんなことあるわけないでしょう。今の貴方相手なら俺だって逃げるのは簡単ですから」
「てめー…」
なんだってマスターが掛けてた眼鏡を奪ったと思ってるんです。マスターから見えないためと、視力が悪くなったマスターから逃走するのを容易くするためですよ。当たり前じゃないですかそんなの。
「お前の中のデレ部分はいつになったら顔を出してくれるんだ?」
「ないんじゃないですか?」
出す機会、ではなく、その部分自体が。
マスターに恋するアンドロイドは多いんですよね。でもなーぜか俺はマスターを尊敬するところはあれど見習いたくないと思うし、好意はなくはないんですがどっちかというと恨みつらみの方が記憶に残っててもう。はは。マスターの日頃の行いの所為ですよね、完璧に。
「くそー…決めた、お前をクーデレにするのを今週の目標にする」
「俺は別に構いませんよ」
デレたってことは、その頃には俺はマスターをちゃんと尊敬できて好意もあるVOCALOIDになっているということでしょう。それなら俺が屈辱に思うところは一切ありません。
ただ、そうでなければそれまでということだけですから。マスターの今週の目標が達成できなかったというだけの問題です。
俺に被害はまったくないので俺は一向に構いません。
…まあ、それが本気で今週のマスターの行動がとんでもないものだったとしたら、全力で止めていただきたいんですけどね。
「俺にデレが生まれるといいですね」
「他人事だな…」
他人事です。マスターが頑張るかどうかも俺の知ったことではありません。
「あ、これはお返しします。ちょっと用事が出来たんで」
「は?おいまだ堪能してねぇぞ俺は」
「じゃああとでバカイト相手にすればいいじゃないですか」
猫耳を外してマスターの頭に装着します。…うーん、ぜんっぜん可愛くないです。多分俺も全然可愛くなかったんでしょうね。別に可愛くても嬉しくないんでどうでもいいんですが。
カイトは俺が借りるんでバカイトで遊べばいいですよ。猫耳だろうが眼鏡だろうがゴスロリだろうがニーソだろうが、アイツなら喜んで着るんじゃないですか?
「じゃ、眼鏡は借りていきますねー」
「おい!それがないとなんもできねぇって…」
鬼畜眼鏡のなんたるか、なんて全然分かりませんが、まあ今の気分をそのまま態度に出せばそれでいいんでしょう。
変わったことといえば少し視界が歪んでるくらいです。これも俺にかかればすぐに矯正して眼鏡にあった視力に出来るので、特に変化はありません。
追いすがるマスターを避けて、直ぐに部屋を出ます。扉の向こうでマスターがこけたのかぶつかったのか、盛大に物の崩れる音がしました。
…弱点発見ですね。今度から追い詰められたら眼鏡を狙うことにしましょう。
「……さて」

「カイト」
俺が呼ぶと、カイトはあからさまに肩を跳ねさせて、ぎこちない笑みを俺に向けました。
「な、なに?」
「お前、お仕置き決定」
「へ!?」
眼鏡を人差し指で上げると、カイトは真っ青になって逃げようとしました。が、そうはいきませんよ。
逃げられる前に手首を掴んで引っ張ります。カイトごときの筋力、俺に比べたら貧弱すぎて勝負にもなりません。
「い、いたいよ!」
「お前なぁ、俺がマスターになんかされたわけないじゃん」
「え、ど、どうしてそれを…」
面白いくらいうろたえてます。少しくらい誤魔化すとか出来ないのか、お前は。単純で手っ取り早いんでいいんですけど。
ともあれ、マスターの言った通りのようですね。これはもう弁解の余地も何もないです。
まあ、最初から言い訳なんかさせるつもりはありませんが?
「マスターにも言われたんで、お前に徹底的に教えてやるよ。俺が何もされてないってことを」
「い、いいよ!もう十分分かったから…」
「駄目。俺の気が済んでない」
「そ、そんな!」
鬼畜眼鏡なんて知りません。今の俺が鬼畜眼鏡かどうかも知りません。所詮気分を出すだけの眼鏡ですから。
でも、これがどういう意味なのか理解して怯えてるカイトを見るのは少し気分がいいですね。今度からバカイトもお仕置きするときは眼鏡掛けてみましょうか。
…面倒くさいですね。いちいちマスターから眼鏡を奪うのは。それは止めておきましょう。
それでは皆さん、俺はこれから忙しいのでこの辺で。またお会いしましょう。

「あーんだーざだーくねす♪」
「何歌ってるの!?怖いよ!」


End.

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