@KAITOだらけのボカロ一家

□KAITOだらけのボカロ一家・その18
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KAITOだらけのボカロ一家・その18

こんにちは、または初めまして、次男カイトです。
長男カイトと三男カイトに耳と尻尾が生えて数日経ちましたが、なんだかすっかり馴染んでいます。
三男カイトはマスターから耳と尻尾の感覚の調整をしてもらい、不便に感じなくなってからはむしろ喜んでいます。
「えへへー。兄さんー」
「なに?」
「可愛い?」
「うん、可愛いよ」
「えへへ」
と、いう感じで。
マスターだけでなく僕もそれが好きらしい、と気付いてから、ますます嬉しそうです。機嫌がいい証拠に、尻尾が元気に揺れています。
マスターも非常にご満悦で、しばらく耳と尻尾を外す気は無いようです。それに内心よっしゃー!と思ったのは秘密です。
長男カイトはというと、何故か炬燵から出てこなくなりました。常に眠っています。
たまに出てきてご飯を食べると、また直ぐに眠ります。炬燵の魔力というんでしょうか。流石にずっと熱い場所にいると身体に悪いので、出てくるように言うのですが、出てきてくれません。
マスターがその説明をしてくれました。
「ああ、実はだな。カイトたちに耳と尻尾を付ける時に、少し性格設定を弄ったんだ。猫カイトは猫っぽく、犬カイトは犬っぽくな。で、俺的に猫は炬燵があると炬燵から出てこなくなるってイメージがあるから、そうしてみた」
「ら、本当に出てこなくなったと。アンタ本当、時々馬鹿ですよね」
「馬鹿とはなんだ。じゃあほら、とりあえずこれを犬カイトに向けて投げてみろ。キャッチしてくれるから」
そう言ってマスターが僕に渡したのは、野球ボールより少し小さい、ゴム製のボール。投げろって、家の中でですか。
「外でやったら不審すぎるだろ。お前がそれでいいなら俺はいいけど」
「何が不審なんですか。キャッチボールするくらい、外でやった方がいいですよ」
「……キャッチボールなぁ。お前が言うなら俺は止めないけど」
「なんですか、気になること言わないでくださいよ」
キャッチボールじゃないんですか?そう首を傾げると、マスターは僕からボールを受け取り、三男カイトに声を掛けると同時に全力投球しました。
「カイトー!受け取れー!」
「へっ!?」
炬燵でテレビを見ていた三男カイトは、マスターの声に慌てて振り向き、自分に向かってくるボールに気付きました。
その瞬間、僕は大変な光景を目撃してしまいました。
三男カイトは向かってくるのがボールだと分かると、途端に目を輝かせ、見事にボールをキャッチしたのです。
それも、口で。
「はふはー、ひひはひはんへふはー(マスター、いきなり何ですかー)」
炬燵から出て、トコトコとこっちにやって来ると、マスターの差し出した手にボールを落とします。
「な?犬っぽくね?」
「……………」
楽しそうに笑うマスターに、呆然とするしかありません。
え、今のなんですか。何が起きたんですか。
「マスター、今の何ですか?なんだか絶対に取らなきゃと思ったら、気付いたらボールを食べてました」
「食べてるわけじゃないだろー。楽しかったか?」
「はい、何でかスゴク楽しかったです」
「よーしよし、よかったなー」
三男カイトの頭を撫でるマスターが、僕にボールを渡します。え、渡されても困るんですけど。
「ほら、取ってこーいってヤツ。あるじゃん」
「あるじゃん、って………」
アンタVOCALOIDを何だと思ってるんですかこの変態が。
「面白いだろー?今度猫カイトに毛糸玉を渡したらどうなるか、試そうかと思ってる」
「マスター…アンタって人は…」
可哀想だから止めてあげてください。長男カイトはプライドが高いので、それで本当に猫のように遊び始めたら自己嫌悪に陥ること間違いないです。
「なんだよ、こういうのはだな、アクセサリで付いていても意味ないんだよ。本当にケモノっぽくなるからこそ可愛いんだよ。ただの猫耳付けるだけだったらな、カチューシャでいいんだよ。生やす必要はねぇんだよ。俺がわざわざ10分もかけてプログラムから作ったんだぞ。なんでそこまでしたかっていうと、そこまでしないと可愛いとは言えねぇからなんだよ。本当のケモノ耳の可愛さってのはな、ただ見た目だけじゃねぇんだ。中身も備わってこそなんだ。どうだ、分かるか?」
「全然分かりません」
話長いんですよ。それに、とんでもない努力をした、と言われても、全然そんな風に聞こえません。ただの変態のたわ言ですよ。
「というわけで、レッツ投球」
「絶対に嫌です」
これ以上、三男カイトのVOCALOIDとしての尊厳を貶めるような行為は慎んでください。お願いしますから。
ただ、僕がしないと言うと、その三男カイト本人が寂しそうに耳を垂れさせます。うぅ、何ですかこの波状攻撃。
「えー…楽しかったのに…」
「カイト、こんなのを楽しいと思っちゃ駄目だ。あと、家の中でキャッチボールは危ないから駄目だよ」
「えー…」
あからさまにションボリされても、投げませんよ。こればっかりは三男カイトがどれだけ言ってこようともしませんよ。
許してカイト。これはお前の為なんだから!
「仕方ないなー、じゃあカイト、俺と遊ぶかー」
「はい!遊びますー!」
「室内でボール遊びはやめて下さいね」
釘を差すと、二人はそれぞれ不満そうな顔をしました。危ないって言っているでしょう!
「じゃあ外行くかー」
「はい!」
「もっと駄目です!」
耳と尻尾を生やしたVOCALOIDが、マスターの投げたボールを犬のようにキャッチしていた、なんて噂が流れたら、ますますご近所の目が痛いじゃないですか!それだけは勘弁してください!
最近買い物に行くと視線が痛いんですよ、本当。もう心労で胃が…いや、VOCALOIDなので胃なんて無いんですけどね。イメージというか、例えです。
「あれも駄目、これも駄目って……性格設定元に戻すかな。本当にお母さんみたいになってきたな」
「誰がアンタの母さんですか、ってちょっと待ってください。今なんて?」
「や、だからお前の性格設定の母親っぽさを元に戻すかって」
しれっと言われて、初めて気付きました。
僕には何の変化もないと思っていましたが、そんな目に見えない変化が起きていたとは。
確かに最近子供が可愛くてしょうがないと思うようになりましたが…これも性格設定変更のせいですか。なんということでしょう。全然気付きませんでした。
「母親っぽいカイトに叱られてみるのもいいかなー、って思って」
「いいかなー、で実行しないでください。というかもう、色々駄目なんで元に戻してください」
「えぇー?耳とかもー?」
「はい」
目が覚めました。そうですよ、耳と尻尾が生えてるなんて普通じゃないです。駄目です、そんなのに慣れちゃいけません。
「だってさ、カイト。折角可愛かったのになー」
「はいー…」
しょんぼり、と垂れる耳が可愛いのは間違いありませんが、三男カイトはそのままで十分可愛いので耳とかを付ける必要はありません。そんなこと当たり前じゃないですか。どうして忘れてたんでしょう。
「早く元に戻してください」
「ちぇー」
マスターはとても不満そうです。が、もう絆されませんよ。
「ほら、早くしてください」
「まだ猫カイトとねこじゃらしで遊んだり、犬カイトにシャンプーしたり、お母さん…っていうか人妻に裸エプロン着せたりとかしたかったのになー」
「しませんよ!するつもりだったんですかそれ!」
「勿論だ!」
今のは胸を張るところじゃないです!この変態が!
元に戻した後は説教ですよ、まったく。


End.

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